知の領域を広げ、世界に羽ばたく

今春、組織改革を経て新たな一歩を踏み出した工学院。
栄えある一期生のみなさんに、
工学研究院長・工学院長馬場直志教授から歓迎メッセージを贈ります。

工学研究院長・工学院長 馬場 直志

新体制の工学院で
将来に役立つ学びを修得

 本年度から開設された工学院の修士課程および博士後期課程に入学されました皆さまを、工学研究院の教職員ともども、心より歓迎いたします。大学院においても基礎学力の向上に努めるとともに、専門分野の研究を通して創造的発想力、論理的思考力、問題解決能力、総合的・融合的に考える力そして高い倫理性を十分身に付けるようにしてください。ここにあげたことは、皆さんが将来的にどのような職種に就こうとも大切なことであり、不透明な現代社会を生き抜いていくために必要となるでしょう。
 昨年度までの工学研究科は、今春から工学研究院、工学院、総合化学院という新組織に変わりました。工学研究院は教員の所属する組織であり、工学院、総合化学院は大学院生の所属する組織となります(本誌11ページを参照)。工学院では、従来通りの「双峰型教育」を実践します。進展する先端工学領域に柔軟に対応でき、かつ果敢に挑戦できるような広い素養と柔軟な思考力が身に付く教育システムを提供します。総合化学院は、前工学研究科の化学系3専攻(有機プロセス工学専攻、生物機能高分子専攻、物質化学専攻)と理学院化学専攻との融合組織であり、分子化学、物質化学、生物化学等の化学の諸領域における研究成果を総合した体系的な教育を行います。

主専修として所属専攻の科目、副専修として所属専攻以外の専攻の科目を履修するもの。

専門領域にとらわれない
幅広い分野の履修が魅力

 今年度からは新たに、本学の理工系大学院が相互に提供する「理工系大学院専門基礎科目」が開講されます。そこでは、専門領域を越えた基礎的・学際的授業科目や科学技術倫理に関する授業科目、国際的に通用するコミュニケーション能力・プレゼンテーション能力を養成するための授業科目などが用意されています。理工系大学院専門基礎科目は4セメスター制(クオーター制とも言い、15週単位ではなく7.5週単位の開講となる)での履修となります。さらに本学大学院では、大学院共通授業科目が90科目以上開講されており、理工系のみならず文系や医系の科目の履修も可能です。幅広い分野の科目を履修できますので、ぜひとも広範な知識を修得するようにしてください。

工学研究院長・工学院長 馬場 直志

教育の国際化を実践
英語力アップ、留学の機会も

 本学の教育研究理念の一つに、『国際性の涵養』があります。今年度から始まる中期目標には「教育の国際的通用性を向上させ、学生の国際的流動性を高める」項目が掲げられています。このため、国際的に通用する単位互換制度を構築することとなりました。
 その一例として工学院では「ダブルディグリー・プログラム」を積極的に進めようとしています。ダブルディグリー・プログラムでは、本学と外国の協定大学の両方から修士号もしくは博士号の学位を授与されます。参加する学生は、外国の大学に1年程度在学し単位修得することになります。
 また、今回の中期目標の中には「多様な形態で留学生を受入れ、留学生数を、学生総数の10%を目標に増加させる」狙いもあり、今後ますます皆さんが留学生と接する機会が増えてくると思います。ダブルディグリー・プログラムや短期・長期留学プログラムへの積極的な参加などにより、本工学院生の国際性が涵養されることを望みます。
 新体制の工学院でも引き続き、英語による教育と研究指導が行われる「英語特別コースe3プログラム」(English Engineering Education program)が開設されています。本年10月からは応用物理学専攻がe3プログラムに加わることで、工学院の全ての専攻が英語コースの対象になります。主として外国人留学生を対象とした大学院教育プログラムですが、日本人の学生も入学できます。工学院の英語コースを経て、海外留学する、外国企業に就職するといった将来の選択肢もさらに広がることでしょう。

目標、志を高く持ち、
実践能力のある人材に成長

 本学には工学系教育研究センター(CEED:Center for Engineering Education Development)があります。国際性啓発教育プログラムの開発を行い、「実践科学技術英語」や「Brush-Up英語講座」を開講していますので、皆さんの英語力向上に役立つと思います。学生発案の国際交流活動支援も行っていますので、積極的に国際交流に貢献してください。
 現代の産業界・学界では、専門分野の基礎知識、研究能力に加え実践能力を有する人材が求められています。CEEDでは、産学連携教育プログラムとして、「海外インターンシップ」「国内インターンシップ派遣」を行っています。自分の専門学問領域が実際にどのように活用されているのかを知る貴重な場であり、プロジェクトへの参画体験が技術者としての社会的責任を自覚し、自らの就業意識を高める成長につながります。
 また、CEEDでは海外からのインターンシップ生の受入れ支援も行っており、外国人学生との共同による研究遂行能力の向上、国際コミュニケーション能力の向上などで成果を上げています。インターンシップ制度を活用して、自らの実践能力の向上に努めてください。
 学業・研究を行うには、まずもって健康であることが大事です。最近特に顕在化していることにメンタルの健康問題があります。工学院ではメンタルヘルスケアの強化を目指しますので、一人で心の悩みを抱えていたりストレスを強く感じるようになったときは、ためらわずに早急に相談員たちに声をかけてください。
 本年度入学された皆さんは、工学院の第一期生となります。工学院で勉学・研究に励み、各自が掲げる高い目標を達成するよう頑張ってください。

工学研究院長・工学院長 馬場 直志

国際性を意識した各プログラムを
存分に活用してください。

工学研究院長・工学院長

馬場 直志

[PROFILE]
1950年札幌で生まれ、網走、帯広を経て小学3年生から再び札幌。1973年3月北海道大学工学部応用物理学科卒業、1978年3月大学院工学研究科応用物理学専攻博士課程修了。その後、千葉大学工学部助手、北海道大学工学部講師、助教授を経て1998年4月教授に昇任。本年4月から工学研究院長・工学院長に就任。