大学院生特集2

大学院生インタビュー

大学院生と卒業生に聞きました

今の私・10年後の私

工学研究科の大学院生は、どんな研究をしていて、どんな将来像を描いているのでしょう。
卒業後は、どのように活躍しているのでしょうか?
現役の大学院生と、卒業して社会で活躍している先輩にインタビューを行いました。


長沼 伸司

有機プロセス工学専攻 
反応有機化学研究室
博士後期課程3年

山内 雄介 Yusuke Yamauchi

◎出身地/北海道美幌町

電解反応で、有機化合物にCO2を固定化

現在、電解反応を用いた有機化合物への二酸化炭素の固定化反応について研究をしており、この反応を用いて抗炎症剤の合成を行っています。これは試薬同士を反応させるのではなく、有機化合物へ直接電気を流すことで反応を行うというものです。

試薬を用いない反応で、エコロジーにも配慮

このような反応は、試薬を用いずに行うことができる点から「グリーンケミストリー」と呼ばれ、エコな反応として注目を集めています。また、温室効果ガスとして世界的に問題となっている二酸化炭素を有効利用できるという点からも有用といえます。

地球のことを考えながら研究や開発を進めたい

今後、こうした二酸化炭素の有効利用法だけではなく、地球のことを考えた数多くの開発がなされていくことでしょう。10年後には地球のことを考えながら研究に携わり、僕たち自身のため、さらに地球のために一役買えるような存在になりたいです。

中林 沙耶

空間性能システム専攻 
環境システム工学研究室
博士後期課程2年

中林 沙耶 Saya Nakabayashi

◎出身地/北海道帯広市

道産の稚内珪藻土が秘めたパワーに注目

北海道北部で産出される、稚内層珪質頁岩[けいしつけつがん](通称:稚内珪藻土)という天然の多孔質材料を研究しています。稚内珪藻土には、湿った空間では水蒸気を吸い、周囲が乾燥すると保持していた水蒸気を吐き出す力があり、現在はタイルや塗り壁などに利用されています。

省エネルギーの除湿システムを目指して

この優れた材料をより環境負荷を低減する技術、特に空調分野に利用し、省エネルギーや二酸化炭素削減に貢献できるシステムを作ることを目指しています。中でも、エネルギーを極力使わずに除湿する「デシカント空調システム」に稚内珪藻土を利用するための研究に重点を置いています。

将来は、北海道に活力が生まれる研究を

将来は、快適性と省エネルギーの両立を目指す研究、そして生まれ育った北海道に活力が生まれるような研究にかかわっていきたいと考えています。今研究している稚内珪藻土が省エネルギー材料としてより一層注目されることで、北海道全体の活性化にもつながってくれればと願っています。

金子 雄大

機械宇宙工学専攻 
宇宙環境システム工学研究室 
博士後期課程2年

金子 雄大 Yudai Kaneko

◎出身地/北海道千歳市

安全で安価なハイブリッドロケットを開発

現在、CAMUI(カムイ)ハイブリッドロケットの研究開発に携わっています。CAMUIハイブリッドロケットは、燃料にポリエチレンというプラスチックを使用しているので、安全で安価に作ることができますが、プラスチックを上手に燃やすには、それなりの“コツ”のようなものが必要です。

科学的なアプローチで燃焼の“コツ”を解明

この“コツ”のようなものを、科学的なアプローチで明らかにしようとしているのが私の研究です。現在CAMUIロケットは安定したロケットシステムとして確立されつつあり、打ち上げ実績は高度で3,500m、ちょうど富士山と同じくらいの高さまで到達しました。

宇宙工学の研究や教育で、社会を活性化したい

これからの10年で、うまくいけば高度1,000km程度まで到達して、下降してくる時の自由落下を利用して無重力実験を行えるようになるのではないかと考えています。そのときには、宇宙工学の分野において、社会を活性化する研究や教育を行っていたいです。

伊藤 雄大

材料科学専攻 
熱エネルギー変換材料研究室
修士課程2年

伊藤 雄大 Takehiro Itoh

◎出身地/青森県むつ市

高温材料として理想的な
NiAl合金を開発したい

現在、高温材料に使われているTBC(熱遮蔽コーティング)は、性能の改善により耐熱温度を引き上げ、エネルギー効率を上げることができます。NiAl合金は、耐酸化性が良いためTBCの材料として期待されています。この合金は、元素を添加することで性能を改善することができ、10年後はさらに優れた耐酸化性を持つ合金が開発されているでしょう。理想のNiAl合金が開発された時、その開発に貢献できていたら幸いです。

後 真理子

物質化学専攻 
先端材料化学研究室
修士課程2年

後 真理子 Mariko Ushiro

◎出身地/神奈川県藤沢市

近未来のエネルギー
デバイスを研究中

現在、電気二重層キャパシター(EDLC)電極用の炭素材料の研究をしています。EDLCは、二次電池のように電気をためることができるデバイスで、太陽電池と組み合わせて使用することが研究されています。私たちの研究がほんの少しでも役に立って、10年後、20年後の近い将来、「一般の家庭でも屋根の上に太陽電池パネルがあって、発電した電気をEDLCに蓄電して24時間使用する」、そんな世の中が実現したら幸いです。

宮川 寛亮

人間機械システムデザイン専攻 
バイオメカニカルデザイン研究室
修士課程2年

宮川 寛亮 Hiroaki Miyagawa

◎出身地/長野県上高井郡高山村

ICセンサーによる
動作解析システムの可能性

人体に小型の加速度センサーを取り付け、被験者の運動を解析するのが私の研究です。動作の詳細がわかることで、例えばその人がどんな筋肉を使って活動しているか等の情報が得られます。将来的にはこの情報を活かすことで、障害を抱える方々のリハビリテーションの際の効果測定や障害の再発予防などに役立てられるほか、ゴルフやランニングのフォーム矯正などスポーツ分野への応用も考えられます。

坂井 友美

建築都市空間デザイン専攻 
建築計画学研究室
修士課程2年

坂井 友美 Yumi Sakai

◎出身地/兵庫県加古川市

医療施設の快適な
ワーキングスペースを目指して

私の専攻する建築計画学は、建築空間の現状を把握し、それを未来につなげる研究です。現在、移転計画のある透析医療の病院を対象に、スタッフの方々に焦点をあて、人工透析という特殊な医療の現場において、どのような病院環境が最適であるかを分析しています。10年後には、医療施設におけるワーキングスペースを向上させ、患者とスタッフのコミュニケーションが円滑になる病院計画に貢献できればと思います。

基礎を幅広く学習することも大事
一つの研究に集中することも大事

教育担当副研究科長 応用物理学専攻  教授 馬場 直志

教育担当副研究科長
応用物理学専攻 教授
馬場 直志

 卒業して10数年経った卒業生から、「大学時代にもっと勉強しておけばよかった」という言葉を聞くことがよくあります。職に就いてから、卒業論文・修士論文で専門的に研究したこと以外の基礎的な科目が必要となる場合が多々あるからです。その時点で、そういえば大学で習ったことがあるなと思い至るのです。大学院では、自分の専門を究めるとともに、幅広く学習するようにしてください。
 大学院では研究が主となりますが、大学院で行う研究が就職先で直接役に立つことはあまり多くないと思います。大学院においては、どんな研究テーマであるにせよ、一つの研究テーマに集中して遂行することで、“問題解決能力”“総合的・融合的に考える能力”“課題発見能力”“創造力”などを培うことが大切です。これらはどんな仕事においても将来的に必ず役に立つことになるでしょう。


◆卒業生インタビューへ