
TALK SESSION
しなやかに 道を拓く女性エンジニアのまなざし
自分らしさを大切に
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三菱レイヨン株式会社 ◎出身地/神奈川県 |
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材料科学専攻 先端高温材料工学研究室 ◎出身地/北海道稚内市 |
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機械宇宙工学専攻 材料機能工学研究室 ◎出身地/北海道苫小牧市 |
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環境フィールド工学専攻 大気環境保全工学研究室 ◎出身地/富山県南戸市 |
研究開発の熱意を胸に社会へ
第一線の現場で活躍

Fumiko Onuma
社会に出て約20年になりますが、学生時代の経験や友人は今もかけがえのない宝物です。
皆さんも学生時代の出会いを大切にしてくださいね。
- 司会
- はじめに大学院生の皆さんから自己紹介をお願いします。
- 北島
- 自動車の排ガス浄化用触媒のメタル担体材として使用されるFe-Cr-Al合金の高酸化挙動について研究しています。
- 真田
- 私は、大気汚染が人体に与える影響について研究しています。
- 脇田
- 私の研究は、航空機のエンジンなどに使用されるチタン合金の疲労破壊についてです。
- 司会
- 卒業生の小沼さんは現在どういうお仕事をなさっていますか?
- 小沼
- 三菱レイヨンは主にアクリル系モノマー〜ポリマーを扱う集材メーカーです。入社当時は基礎研究に従事していましたが、今は製品に近い研究開発に携わっています。具体的には、ノートパソコンや携帯情報端末の液晶画面を明るく均一にするための材料について研究しています。研究開発にかかわりたかったことと、通勤しやすい場所にあることから今の会社を選びました。
基本を積み重ね、その先に待つ
ブレイクスルーの醍醐味
- 北島
- 小沼さんがやりがいを感じるのはどんなときですか?
- 小沼
- なにかわからない現象やトラブルを前に“ブレイクスルー”しなければ製品化へと進まないときに、自分が組み立てた実験でその難題を解決することができた瞬間です。経験を重ねるほどに自分の読みどおりに実験が進み、まるでパズルのピースがぴったり合うような成果が得られた瞬間は「やった!」という気持ちです(笑)。細かい実験一つとってもこのワクワク感を維持できるところが、技術者としてのやりがいであり醍醐味ではないでしょうか。皆さんはいかがですか?
- 真田
- 私と脇田さんはまだ修士課程なので、先生や先輩たちの指示を受けて基本を覚えていく毎日です。
- 北島
- 私も修士課程のときはお二人と同じでした。研究に自分なりの創意工夫が盛り込めるようになったのは、博士後期課程に進学してからです。あと2年かけて技術者としての醍醐味に近づきたいです。
- 小沼
- 焦らないでくださいね。もしかすると皆さんも細かい部分で醍醐味を感じていても、それを自覚していないだけなのかもしれませんよ。
「私」の枠組からもっと自由に
企業と家族で築くライフスタイル
- 真田
- 社会に出てから女性エンジニアならではの壁を感じたことはありますか?
- 小沼
- 壁だとか不利だと感じたことはありません。ただ、男性が多い職場なので、周囲がというより自分が女性であることを意識して、初めは少し肩に力が入っていたかもしれませんね。今は企業も個人の資質に期待する時代です。働く側も性別や学歴という枠組みから自由になれた分、短期間で成果を出す研究開発が求められています。
- 脇田
- 私には2歳の娘がいます。家族に協力してもらいながら、研究開発をこれからもずっと続けていきたいと思っています。育児と仕事を両立することは現実的に可能でしょうか?
- 小沼
- 安心してください。“働くお母さんエンジニア”はたくさんいます。1年間の育児休暇後に元気に復職する方もいます。共働きの場合でもご主人の転勤のために女性が仕事を辞めるのは、一つの選択肢に過ぎません。会社と相談してご主人の勤務地に近い部署に異動したり、家族の話し合いでどちらかが単身赴任を選んだりさまざまです。また、女性エンジニアの採用人数は年々増えています。これからもライフスタイルのバリエーションはどんどん広がっていく予感がします。
- 司会
- 育児休暇の充実や異動の交渉など企業が理解を示す背景には、「時間や経費をかけて育てた優秀な人材を失いたくない」という思いがありそうですね。
- 小沼
- おっしゃる通りだと思います。人材を大切にする姿勢こそ、生き残りをかけた企業の雇用対策なのでしょう。
研ぎすまされたエンジニアの時間と
心地よさを楽しむオフのゆとり
- 司会
- 小沼さんのライフスタイルはどういう感じですか?
- 小沼
- フレックスタイム制の勤務なので、コアタイム以外の時間の使い方は本人の裁量に任されています。週に一度の “ノー残業デー”のときは男女の区別なく全員が夕方5時半に退社します。私も、同僚や友人たちとお酒を飲みに行ったりしてプライベートの時間をしっかり満喫しています(笑)。
- 司会
- 大学院生の皆さんはどんな毎日を送っていますか?
- 北島
- 平日は、朝9時に研究室に入り、夜遅くまで実験を行います。そこで頑張ることで、土日を休息日にできます。ピアノのレッスンに通ったり、部活の仲間とバドミントンをしたりしてリフレッシュしています。
- 脇田
- 私も、平日は研究室で実験を行い、週末をデータ整理の時間にあてています。家庭と研究の両立を考えながら、スケジュールを組み立てています。
- 真田
- 今は授業が中心の毎日です。自宅で研究データを整理することもあるので、アルバイトも比較的自由に勤務シフトを選べる接客業にしました。
周囲の声に耳を澄ませ
心に響く一言を感じて
- 小沼
- 次は私からも皆さんに質問があります。将来の夢はなんですか?
- 北島
- 大学か高専の教員になりたいです。
- 脇田
- 企業で研究開発をしたいです。
- 真田
- 工学研究も好きなのですが、営業職や接客業にも興味があって…どの方向に進めばいいのかちょっと迷っています。
- 小沼
- 皆さんの前には限りない選択肢や可能性が広がっています。進学や就職、理解のあるパートナー選びや母親としてどうすべきか、悩む場面はきっと訪れるはず。そこでなかなか一歩前に踏み出せないときこそ、家族や友人、人生の先輩のお話に耳を澄ませばその中のどれかが心に響いて一段上の選択肢を見つけられるかもしれません。一人で悩まずにたくさんの方とお話してみてください。
- 脇田
- 小沼さんのお話で今日は元気をいただきました。
- 北島
- 私も製品などの身近な研究開発に興味がわいてきました。
- 司会
- 本日はありがとうございました。
仕事からプライベートまで話は広がり、トークセッションは終始和やかな雰囲気で進んでいった。