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嫌気性アンモニア酸化細菌(anammox)を用いた次世代型水浄化技術の開発

IMG_0012_2.jpg嫌気性アンモニア酸化は酸素を要求せずに窒素を除去できる画期的な生物プロセスです。具体的には、1)曝気動力の削減、2)余剰汚泥発生量の削減、3)脱窒反応のために炭素源が不要、4)温室効果ガスであるN2Oガスを発生しないといった利点を挙げることができます。本研究室では嫌気性アンモニア酸化プロセスを廃水処理へ応用すべく、反応を担うanammox細菌の生理学的特性の解明やプロセスの処理性能についての研究を行っています。
より深く勉強したい方は以下の文献をオススメします。

  • Kartal, B., Kuenen, J.G. and van Loosdrecht, M.C.M.. (2010) Sewage treatment with anammox (邦題:嫌気性アンモニア酸化による下水処理). Science 328: 702-703.
  • Ali, M., Chai, L.Y., Tang, C.J., Zheng, P., Min, X.B., Yang, Z.H., Xiong, L. and Song, Y.X.. (2013) The increasing interest of ANAMMOX research in China: bacteria, process development, and application (邦題:中国における嫌気性アンモニア酸化プロセスの開発および適用). Biomed. Res. Int. 2013: 134914.

嫌気性アンモニア酸化??

TEM.jpg嫌気性アンモニア酸化反応はアンモニアと亜硝酸から窒素ガスを生成するユニークな反応で、1990年代にオランダの研究グループがその存在を初めて実証しました。現在では、嫌気性アンモニア酸化反応は普遍的に環境中で生じており、海洋から放出される窒素の数割が嫌気性アンモニア酸化に由来すると見積もられています。画像はanammox細菌 “Candidatus Brocadia sinica”の電子顕微鏡観察画像 (Oshiki, M., Shimokawa, M., Fujii, N., Satoh, H. and Okabe, S.. (2011) Physiological characteristics of the anaerobic ammonium-oxidizing bacterium ’Candidatus Brocadia sinica’. Microbiology 157: 1706-1713.より引用)


環境中微生物の新機能マイニング

FigS2_genome_circular_map.jpgDNA解析技術の進展によって、微生物ゲノムを(比較的)容易に決定することができるようになってきました。ところが、ゲノム上に存在する遺伝子の大半は機能が明らかにされていません。それらの機能未知遺伝子の中には我々の生活に役立つ機能を持つものが含まれているかもしれません。そうした遺伝子の機能を明らかにすることを目指した研究に取り組んでいます。
より深く勉強したい方は以下の文献をオススメします。

  • Lücker, S., Wagner, M., Maixner, F., Pelletier, E., Koch, H., Vacherie, B., Rattei, T., Sinninghe Damsté, J.S., Spieck, E., Paslier, D.L. and Daims, H.. (2010) A Nitrospira metagenome illuminates the physiology and evolution of globally important nitrite-oxidizing bacteria. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 107: 13479-13484.

ゲノム??

KEGG 2.jpg生命の設計図とよばれるように、ゲノム上に存在する遺伝子によって生物の機能は決定付けられている。微生物(細菌)のゲノムは一般的には数メガバイトの大きさで、ゲノム上に遺伝子が数千個存在する。筆者が解読したanammox菌のゲノムには約4千個の遺伝子が存在したが、そのうち約半分は機能を推定することができなかった。2000年代半ばまでは微生物の全ゲノムを解読するとNature誌に掲載されるほどのインパクトだったが、現在では筆者でも解読できる時代に。科学技術の進展は早い。


ご興味があれば、どうぞご相談ください。

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微生物培養:恒温槽、膜分離型培養装置、嫌気チャンバー、ガス置換装置、ロールチューブ装置
微生物(細菌・ウイルス)定量:定量PCR装置、蛍光光度計
ガス、水質分析: COD、吸光光度計、ガス・液クロマトグラフィー



環境微生物工学研究室