特集・研究紹介

工学研究院・工学院の
先駆的な技術を発信します。

No.424 2020年12月号

未来の社会に
貢献する材料研究

特集 02

表面のナノ空間を制御し、未知の材料を創る、不思議な現象を生み出す Fabrication of Novel Materials and Creation of Magical Phenomena via Control of Surface Nanospaces

人まねではない新発見への扉、
その鍵は疑問を楽しむ遊び心にあり!

材料科学部門 エコプロセス工学研究室
准教授
菊地 竜也

[PROFILE]

出身高校
国立函館工業高等専門学校
研究分野
材料表面科学、電気化学
研究テーマ
自己規則化ナノ材料の作製と応用

小学生でも作れるような自己規則化ナノ構造に挑戦

「アルマイト」と呼ばれる身近な製品をご存知でしょうか? およそ100年前、日本で発見された材料であり、高校の化学の教科書に必ず記載されています。アルマイトの正体は、アルミニウムの表面に生成する不動態皮膜(酸化アルミニウム)であり、電気化学反応を用いて人工的に作られたものです。この不動態皮膜にはナノレベルの小さな孔がたくさんあり、反応条件を上手にコントロールすると細孔が規則的に並び(自己規則化)、とても美しい細孔配列が得られます(図1)。この細孔は1cm²あたり1010個(10000000000個!)もあります。

この構造をそのまま活用すれば1010個の孔が開いた「ナノフィルター」になりますし、細孔に金属を埋め込めば1010個の「ナノロッド」が出来上がります。私たちの研究室では、どうしてこのような不思議なナノ構造が生成するのかを探り、小学生でも簡単に自己規則化ナノ構造を作ることができる研究開発を進めています。

図1 自己規則化ナノ細孔構造 Figure 1 : A self-ordered nanoscale pore structure.

失敗に潜む新発見!超親水・超撥水を確認

このアルマイトの研究を進めていくうちに、「孔」とは逆の「突起(ファイバー)」が成長することも発見しました。ある条件下では材料表面に直径10 nm(0.00000001m!)のファイバーがどんどん成長し、そこに水滴を垂らすと、水は素早く濡れ広がって、すぐに蒸発してしまいます(超親水)。また、ファイバーの表面を水と反発する物質で修飾すると、とてもよく水をはじき(超撥水)、水滴がよく転がったり、転がらずにより大きな水滴となって表面に吸着する現象を観察できました(図2)。

このような研究成果は全て、学生との実験の中で偶然発見したものです。失敗だと思って一度は捨てた試料をたまたまゴミ箱から拾い出し、改めて観察した際にこれらの性質を見つけ出すことができました。これをご覧の皆さんもこれから研究を進めていくと、たくさんの失敗が待っています。でも、もう1度よく見つめ直してみると、そこにはたくさんの素晴らしい発見が待っています。だから、研究は面白い!

図2 吸着性・滑落性超撥水表面 Figure 2 : Sticky and slippery superhydrophobic surfaces.

Technical
term

不動態皮膜
金属の表面を覆う、耐食性を持つ酸化皮膜。
内部が酸化して腐食が及ぶのを保護する。