特集・研究紹介

工学研究院・工学院の
先駆的な技術を発信します。

No.415 2018年07月号

未来への扉~国際共同研究~

特集 05

北極圏域との研究交流 Joint research with arctic region

建物一棟についても考え方が異なる
多面的なアプローチが面白い!

空間性能システム部門 建築環境学研究室 准教授
森 太郎

[PROFILE]

研究分野
建築環境学
研究テーマ
建物の室内環境・エネルギー等

寒冷地の課題解決を目指し
北極圏域の他大学と交流

現在、気候変動が社会に与える影響についてメディア等で頻繁に取り上げられています。我々が暮らす北海道のような寒冷地もその影響からは逃れられず、雪の質や量の変化が建物の構造強度に与える影響、都市化がもたらす大気汚染、水質汚染等さまざまな課題を抱えています。そもそも寒冷地で現代生活を維持するには、エネルギー等の多くの物資とそれに伴うコストが必要になります。したがって建物や都市、生活を維持する手法も、温暖地域とは異なったものが求められます。

このような背景をもとに、本研究室では北極圏域の国と様々な研究交流を行ってきました。特に昨年度はラップランド大学(フィンランド)との間で建築史意匠学研究室(執筆時。本年4月から建築デザイン学研究室に名称変更)と共同でサマーインスティテュート(世界の第一線で活躍する研究者と本学教員とが協働で教育活動を実施するプログラム)を実施し、他にもFEFU(極東連邦大学)との間で共同研究の準備を進めています。

図1 FEFUでの講義風景 Figure 1 : Lecture in FEFU.

ロシアとの取り組みもスタート
フィンランドの住宅診断に学ぶ

重要な共同研究先の一つであるロシアとは、昨年来、北海道の事業や北海道大学のRJE3(極東・北極圏の専門家を目指す日ロ教育プログラム)等を通してお互いに行き来が始まっています。今年8月にはFEFUの助手の方々が北海道を訪問する予定です。

フィンランドとは、現在北海道でも進んでいる中古住宅のインスペクション(診断)手法に関する技術交流が行われています。フィンランドでは、住宅が流通される際に健康問題への留意からサーモカメラによる断熱性能チェックが必須となっています。近年、北海道でも民間資格「北海道住宅検査人」が行うサーモカメラによる断熱欠損の検査が浸透しつつあります。先進国フィンランドから学ぶことは多々ありますが、住宅の工法が北海道と異なるため、現地の手法をそのまま適用できるわけではありません。その違いに対応していくためにも技術交流を継続していく予定です。

また、フィンランドは現在、Arctic Council(北極圏会議)の議長国となっています。Arctic Councilでは気候変動に関する様々な項目も取り上げられています。本研究室ではフィンランド環境省や幾つかの大学と共同でZeroArctic(地域文化に配慮したカーボンニュートラルなまちづくり)という研究プログラムを作成するための交渉を行っています。

図2 フィンランドのサーモカメラを利用した断熱、気密欠損検査 Figure 2 : Inspection method for insulation and air-tightness with IR camera in Finland.

Technical
term

北海道住宅検査人
一般社団法人北海道建築技術協会が普及・登録を推進する制度。既存住宅における現況の傷み・劣化・不具合の状況等の調査を行い,第三者の視点から改修アドバイスを行う。