特集 02
未来の「光」を一緒に創りませんか?
─半導体の超微細加工を実現するプラズマ光源の開発─ Ultra-fine semiconductor processes based on plasma light sources
見えないものを計測する技術で半導体開発現場を支えたい
応用量子科学部門 プラズマ材料工学研究室 准教授
富田 健太郎
EUV露光で焼き付ける超微細な半導体回路
半導体はスマートフォン、自動車、家電製品など、私たちの身近にある、あらゆる電子機器に使用されています。今後も自動運転やAI技術をはじめとするIoT領域が拡大するにつれ、半導体にはデータ処理能力の飛躍的な向上と低消費電力化の両立が求められます。その実現には半導体のさらなる微細加工が必須であり、超微細加工を実現する最先端技術としてEUV (Extreme-Ultrap Violet)と言われる極端紫外光を用いた露光(リソグラフィー)があります。私の研究は、このEUVを発する光源の開発に関するものです。
露光(リソグラフィー)とは、写真のフィルムなど光に反応する材料の表面に光をあて、感光させることを指します(図1)。半導体における露光とはシリコンの基板上に光を用いて、微細な回路パターンを焼きつける工程を指します。回路パターンをどれだけ細かくできるかは波長の短い光がキーとなり、EUV露光では非常に短い波長(13.5ナノメートル)の光を用いています。
環境負荷の低減を目指してEUV光源を計測・制御
現在のEUV露光技術は膨大な電力が必要であり、環境への負荷が問題視されています。特に、EUVを発する源(光源)の生成に大きな電力が使われており、光源生成の省エネ化が打開策として期待されています。EUV光源は、1億分の1秒程度のごく短時間だけ金属を摂氏30万度以上のプラズマ状態にし、EUVを放出するものです(図2)。EUV光を効率よく取り出すためには、光源となるプラズマの温度や密度、流れを計測し制御(コントロール)することが基本となります。ところが、こうした物理量計測は非常に難しく、長年ブラックボックスのような状態が続いていましたが、「計測できないものは制御できない」という理念の下、私たちのグループでは、今ではEUV光源の温度や密度、流れの計測を世界で唯一可能としています。
このように北大工学部には「半導体微細加工の要であるEUV光源が、なぜ光るのか?」を学理として明らかにできるオンリーワンの計測技術があります。この「なぜ?」を解き明かす研究を積み重ね、私たちと一緒に「未来の光」を創っていきませんか。
Technical
term
- プラズマ
- 固体・液体・気体ではない“第四の状態”とも言われ、超高温によって分子が電離し、電子とイオンが混在している状態。