特集 05
自動運転車と共存する社会に向けて Toward a society coexisting with autonomous vehicles
車移動が多い北海道で考えるみんなのための道路ネットワーク
土木工学部門 交通ネットワーク解析学研究室 助教
峪 龍一
自動運転車とドライバーが共存する移行期を舞台に
現在、世界中で自動運転車の実用化に向けた研究が活発に進んでいます。とはいえ、すべての車が自動運転車に置き換わるには時間がかかり、私たちはしばらくの間、自動運転車と人間が運転する車が共存する社会を過ごすことになります。
私たちの研究グループでは自動運転車が性能を十分に発揮できるような道路ネットワークの在り方を決める方法論を開発しています。例えば、一部の車線を自動運転車のみが利用できる専用車線にすると、自動運転車は相互通信技術によって前後の車間距離を短くして、混雑や渋滞を軽減させることができます(隊列走行技術 図1)。しかし、その規則正しい車列の中に人が運転する車が混ざってくると、予測不能なドライバーの動きもあり、自動運転車はその技術を十分に活かすことができません。専用車線を設置するからこそ、自動運転車の性能を最大限に発揮できるようになります。
混雑を回避するよりよい配置パターンを見つけたい
では、どの道路に専用車線を配置すればよいでしょうか。例えば、13カ所の交差点と19本の道路で構成される仮想的な道路ネットワーク上で考えてみると(図2左)、このとき専用車線を配置するパターンの組み合わせは2の19乗通り(542985通り)もあります。それぞれの配置パターンにおける、道路ネットワーク全体の混雑度を均衡配分と呼ばれる手法を用いて計算すると、専用車線の配置パターンによって、混雑度が大きくばらついていることがわかります(図2右)。ここでは単純なケースを仮定していますが、現実には国・自治体の財源など、様々な制約を考慮したうえで、自動運転車と人が運転する車双方の利益に配慮した、よりよい配置パターンが政策として選択されます。
こうした公共性が高い道路政策は、移動距離が長く、インフラ面で様々な課題を抱えている北海道では、他府県以上により身近な問題として自分たちに関わってきます。人の役に立つ工学の中でも、とりわけ道路ネットワークに関する研究は「みんな」のための研究であることを思うと、非常に取り組みがいのあるテーマです。
Technical
term
- 自動運転車
- 周辺環境の認識、加減速・操舵といった一連の運転操作を、システムが自律的に行い、安全に走行できる車。