特集・研究紹介

工学研究院・工学院の
先駆的な技術を発信します。

No.427 2021年12月号

未来が見えていますか?
データサイエンス最前線

特集 05

宇宙? 深海? まずは地中でしょ! Space? Deep Sea? Ground first!

人類の進化に直接貢献できる!
ロマンあふれるスマートマイニング

環境循環システム部門 資源マネージメント研究室
教授
川村 洋平

[PROFILE]

出身高校
北海道札幌南高等学校
研究分野
鉱山情報学
研究テーマ
スマートマイニング(高度情報化鉱山操業)技術の開発

鉱山って必要? その実態は… 世界の花形学問、鉱山工学

“鉱山”と聞いてピンとくる日本人はあまりいません。それくらい日本には稼働中の鉱山がありません。しかしながら私たち人類の生活が成り立っているのは、実は世界のどこかで常に鉱山が稼働し、金や銅などの地下資源を地中から採掘しているからに他なりません。この地下資源を扱う技術、「鉱山工学(Mining Engineering)」 は今、世界的に花形学問のひとつであり、情報工学の発展とともに大きな変革の波が押し寄せています。

これまでの鉱山の長い営みを経て、現在は“より深く・より安全に”そして“より環境問題やコスト面に配慮した”鉱山操業のあり方が求められています。そこで期待を集めているのがICTを積極的に活用した「スマートマイニング」です。現状、鉱山を動かすのは基本的に人=オペレーターです。人が掘り、スケジューリングし、オペレーションしてジャッジメントする。そこにAIやビッグデータに代表されるデータサイエンスを融合させることで、安全化・効率化・省力化に優れた未来型の鉱山操業を実現しようとしています。

鉱山のあらゆる情報を「見える化」「予測」「最適化」

この未来型鉱山操業に欠かせない技術が、「デジタル・ツイン」です。デジタル・ツインは鉱山のあらゆる要素を情報化し、最新のユーザーインターフェイスと高度な視覚化を使って、オペレーターが鉱山で何が起こっているのかを理解するのを助けます。例えば、実際には足を踏み入れることができない地下坑内の環境情報を知ることができ(図1)、さらには事前に収集した岩盤応力データをタブレットで持ち込むことで、目視だけでは判断できない危険な箇所を回避することも可能になります(図2)。

こうした「見える化」「予測」「最適化」の技術研究が鉱山工学で成果を出すことができれば、ゆくゆくは深海に眠る海底資源や、あるいは宇宙空間で新たな資源を採掘することも決して夢物語ではなくなります。我々の研究室はこうした技術群を世界に発信する日本で唯一の「スマートマイニング」研究拠点であり、同時に世界で活躍できる若手の育成拠点としても国内外の企業から注目を集めています。

図1 鉱山バーチャルリアリティー(HMDで360°の鉱山空間へ) Figure 1 : Mining VR
図2 デジタル・ツイン技術による地下鉱山危険個所の可視化(AR) Figure 2 : Visualization of hazardous area in Underground Mining using Digital Twin

Technical
term

デジタル・ツイン
実空間に対応するライフサイクルを反映するためのマルチフィジックスかつマルチスケールな統合システム。