特集・研究紹介

工学研究院・工学院の
先駆的な技術を発信します。

No.419 2019年07月号

北大総合博物館へ行こう!工学部展示で研究体験

おすすめ展示 01

元素の音色 Tone of Metals

金属の音や響きが物語る
材料固有の特性に耳を傾けて

材料科学部門 先端高温材料工学研究室
准教授
林 重成

[PROFILE]

出身高校
大阪府立市岡高等学校
研究分野
耐熱合金
研究テーマ
高温酸化・腐食

金属固有の音色や響き
その違いに法則あり

皆さんは、綺麗な音色を奏でる鉄琴は、鉄だけでなくアルミニウムでも作られていることを知っていましたか?鉄琴の設計者が様々な金属をたたいて楽器にふさわしい良い音色を奏でる素材を探したのでしょうか。鉄琴と呼ばれるのに、実はアルミニウム製の鉄琴もあるわけです。

鉄琴をたたくと綺麗で澄んだ音がしますが、その音色は金属の持つ特性と強く関係しています。たたいた金属の振動が空気中を伝わり鼓膜を震わせて、我々は音として認識できます。それぞれの金属に固有振動数(共振周波数)があり、さらに、振動の減衰挙動は金属によって異なるため、様々な金属をたたいた時の音は、異なる音色や響きとして聞こえるわけです。

金属固有の物性値としてヤング率E、密度 ρ、内部摩擦Qがあります。物質が変形する際、応力と歪(応力面に垂直方向)には比例関係が成立します(フックの法則)。その際の比例定数をヤング率(縦弾性係数)といい、ヤング率と密度は、物質の固有振動数fと以下の式で結びつけられます。

f=α2/2πL √EI/ρA

このときのαは境界条件に基づく定数であり、Lは物質の長さ、Iは断面二次モーメント、Aは物質の断面積です。この式から、ヤング率が高い金属は固有振動数が高い、すなわち高い音を奏でることがわかります。また、物質内部で振動のエネルギーが熱エネルギーに転換して失われる内部摩擦の面から考えると、内部摩擦が小さな金属ほど音は長く響くことになります。

総合博物館で鉄琴体験
素材の特性を想像する

図1 異なる金属製の鉄琴 Figure 1 : Metallophone made by different metals.

今回、北大総合博物館に同じサイズの異なる金属を用いて作った鉄琴を展示することとなりました(図1)。この鉄琴は実際にたたいて金属の音を体験することができます。同時に音板に使われている素材を円柱にしたものを実際に持って重さの違いを実感することもできます(図2)。鉄琴をたたいて聞こえる音は、材料の特性そのものです。皆さんが好む音はそれぞれ違うと思いますが、素材それぞれの音を聞いて、金属材料の特性を想像し、それぞれの金属が何かを考えてみてください。

図2 いろいろな金属(プラスチック)の色と重さ Figure 2 : Color and weight of different materials.

Check!

博物館展示 ここが見どころ!
銅やチタン、アルミニウムなどさまざまな金属の音板を試せる鉄琴を博物館展示のために制作。響きの長さや音の高低の違いにも注目してほしい。