特集 05
企業共同研究による次世代ポリマー材料の開発 Development of next-generation polymer material via collaboration with a company
企業との共同研究を通して
技術の先に「製品」があることを実感!
総合化学専攻 高分子化学研究室 博士後期課程3年
吉田 康平
異なる性質の高分子が並ぶ
ブロックコポリマーに着目
岩手県の高専を卒業後、先生に勧められて北大工学部3年に編入しました。修士課程1年のときに北大リーディングプログラム(物質科学で世界を切り拓くグローバルリーダーを育成するプログラム)に合格し、博士後期課程への進学を決意しました。今回は、大学院に進学すると企業と共同研究をする機会にも恵まれるという実例を、皆さんにご紹介したいと思います。
プラスチックやゴム、樹脂、繊維など私たちの身の回りのあらゆるものは、「高分子(ポリマー)」で構成されています。私の研究では、その中でも特殊な「ブロックコポリマー」を取り扱っています。ブロックコポリマーは、親水性と親油性のような混じり合わない2つのポリマーを化学的に無理やり結合させたような性質を持っています。その結果生まれる「ミクロ相分離構造」は、数nm間隔で高分子が成分別に分かれ、固まって並ぶ配列を周期的に繰り返すことから、様々なナノ構造体を作り出すためのテンプレートとして利用されています。例えば、異なる親水性ポリマー(青)と親油性ポリマー(赤)が規則的に並んでいる状態で、一方の親水性ポリマーを優先的に除去すると、親油性ポリマーだけが残ったナノパターンを下の層に転写することができます(図1)。
もっと微細に、もっと小さく
誰も作ったことがないモノづくり
この数nmレベルのミクロ相分離構造を使ったリソグラフィ技術が確立できれば、半導体が使われている世の中のあらゆるデバイス(家電製品やパソコンなど)を飛躍的に小型化・高性能化することができます。私は現在、半導体素子加工用化学薬品(フォトレジスト)メーカーである東京応化工業株式会社との共同研究で、新しいブロックコポリマーの開発に取り組んでいます。ポリマーの合成は北大の研究室で行い、ミクロ相分離構造の解析は主に企業で行うことで、研究室には無い最新技術を利用して効率的に実験を進めることができます。さらに、私の場合はインターンシップでも受け入れていただき、利益を追求する企業の研究と知的好奇心を探求する大学の研究の違いを学ぶことができました。
まだまだ課題は多いですが、残りの大学院生活を通して世界で誰も作ったことのない新しいポリマー材料の開発を目指していきます。