特集・研究紹介

工学研究院・工学院の
先駆的な技術を発信します。

No.413 2018年01月号

インフラテクノロジー開発拠点、いよいよ稼働

特集 02

一様湾曲水路における岩盤河床の侵食及び水成地形に関する実験的研究 Experimental study on bedrock incision and bed configuration in annular flume flow

川底から見えてくる様々な自然現象
北海道は最適な研究フィールドです

環境フィールド工学部門 河川・流域工学研究室 助教
リマ・アドリアーノ・コウチニョ

[PROFILE]

研究分野
環境水工学
研究テーマ
岩盤河床浸食

複雑な岩盤河床の浸食
自然河川の蛇行箇所に注目

河川は、物理的に複雑なシステムから構成されています。その複雑さには、河床形態や土砂、植生など様々なものが関係しています。この複雑さは、ハビタットや栄養素・汚染物質などの混合プロセス、地下水面などに直接的な影響を与えています。私たちは、これらの複雑なプロセスを分かりやすくするために室内実験を行っています。

図1の実験装置は、回転蓋で円形水槽の水を駆動して河床付近の流れを再現し、岩盤河床の浸食をシミュレートする装置です。岩盤河床劣化は、一般的にplucking(摘採)・dissolution(溶解)・cavitation(空洞現象)といったプロセスで発生しますが、私たちは主に摩耗による浸食を中心に研究しています。

摩耗による浸食は、土砂が岩盤にぶつかることで発生します。土砂が無い、あるいは少ない場所では、岩盤にぶつかる素材がないため、摩耗が発生しません。ところが、土砂の量が多すぎても、土砂が岩盤をカバーするため、摩耗が発生しないことがわかっています。このことから、摩耗による浸食が発生しやすい場所は、土砂の量が少なすぎもなく多すぎもしない、適度な量があるところだと予測できます。

自然河川には、直線だけでなく蛇行する箇所も存在し、この蛇行箇所の湾曲部分では、土砂は蛇行箇所の外側から内側に移動します。その結果、外側には土砂が少なく、内側付近に土砂が多くなるため、その両端には摩耗による浸食が発生せず、河道の中心部に摩耗による深い浸食が発生することが明らかになってきました(図2)。

図1 岩盤河床浸食シミュレーションを行う実験装置 Figure 1 : Experimental apparatus where bedrock incision was simulated.
図2 実験後の水成地形 Figure 2 : Bed configuration after the experimental run.

長年かけて堆積される自然現象を
わずか数日間の実験で明らかに

実験装置の湾曲水路は、深く険しい岩盤峡谷河川の構造を再現しています。実験装置を用いることで、自然界では数年かけて進むプロセスを、わずか数日間でシミュレーションすることが可能になりました。私たちは、岩盤河床をモルタルで再現し、モルタルの上に砂と水を入れ、蓋を回して流れを作り出すことで、浸食と土砂の堆積パターンを調査しました。その結果、モルタルの上の砂が適度に少ない領域で摩耗による浸食率が最も大きいことを証明することできました。

今後は、より広範囲のデータウェアハウスを作成するため、様々な実験条件を設定した岩盤河床を用いてさらに複雑な条件で実験を進めていきます。

Technical
term

ハビタット
生物の生息空間。河川やその周辺は、地質、地形、河道形態、土地利用等により様々なハビタットを含む。