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石油探査用高温動作シンチレータ

大学院工学研究院 応用量子科学部門
准教授 金子 純一

[PROFILE]

出身高校
茨城県立竹園高等学校
研究分野
放射線計測学、結晶工学、半導体工学
研究テーマ
放射線検出器・計測器、耐放射線電子デバイス等の開発
研究室ホームページ

みなさんシンチレータという言葉聞いたことありますか?あまりなじみが無いと思いますが、放射線が入ると光を出す材料で光検出器と組み合わせて使います。ここで紹介するGPS(Gd2Si2O7:Ce、ガドリニウムピロシリケート)は金子と応用化学部門の樋口幹雄先生が中心となり10年以上の歳月をかけて実用まで持って行った北海道大学発の技術です。現在、株式会社OXIDEが製造販売しています。

GPSの特長は①潮解性が無い、②発光量が非常に大きく、高温環境下でも高い発光量を持つ、③検出効率も充分高いが挙げられます。具体的な用途として、石油・ガス探査があり、従来使われていたGSO(Gd2SiO5:Ce)と比較すると、室温での発光量は3倍程度、上限使用温度は150℃から300℃以上と大幅に向上しました。実際の石油探査では小型加速器などと一緒に石油井戸の中に下ろし、加速器による照射で有機物から出て来るγ線を測定して石油・ガスの有無等を判断します。地中では地温勾配と言って3℃/100m前後で深くなるほど温度が上昇するので、GPSの登場によりこれまで対象とならなかった深い場所にある石油・天然ガスの採掘可能性が広がります。

GPSシンチレータの発光量の温度依存性
GPSシンチレータ(株式会社OXIDE提供)