工学部発のア・レ・コ・レ
放射光X線ナノイメージングによる炭素繊維強化複合材料の界面はく離検出
大学院工学研究院 機械・宇宙航空工学部門 材料機能工学研究室
准教授 高橋 航圭
炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics: CFRP)は、強度の高い炭素繊維を樹脂で固めた材料です。重さは鉄の1/5、アルミの1/2程度ですが、一般的な鉄鋼材料よりも遥かに強い材料のため、自動車や航空機、宇宙機などへの利用が進んでいます。しかし、異なる材料が混ざると壊れ方が複雑になってしまい、安全に使うための評価が難しいのが課題です。
私たちの研究室では、太陽の100億倍もの明るさに達する放射光を扱える大型実験施設(SPring-8)で、CFRPが壊れるきっかけの解明に取り組んでいます。病気やケガの診断などで使われるレントゲン(X線撮影)と同じ仕組みですが、放射光X線を顕微鏡のようなシステムに利用することで、1/1000ミリ以下の非常に小さい傷を検出できます。CFRPに使われる直径わずか7/1000ミリの炭素繊維を埋め込んだ樹脂サンプルを引っ張りながらSPring-8で観察するため、研究室で独自に試験機を開発しました(図1)。これにより、①材料の表面で炭素繊維が樹脂からはがれる、②はがれた部分が繋がってき裂になる、③き裂が材料の内部へ進んでいく、というプロセスを世界で初めて可視化しました(図2)。このようにして壊れるきっかけを解明していけば、壊れにくい安全な構造物を設計できるようになります。