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多彩な面々による、
工学研究的フリートーク。

卒業生コラム

航空宇宙から人工知能へ

フランス国立情報学自動制御研究所
ポスドク 中野 多聞

[PROFILE]

出身高校
東京都私立巣鴨高校
2012-2014
北大工学院機械宇宙工学専攻にて修士号取得
2014-2018
仏ポアチエのENSMA(École Nationale Supérieure de Mécanique et d'Aérotechnique)にて航空宇宙分野における流体力学の博士号取得
2018-2020
ポスドク研究員:仏トゥールーズの民間研究所CERFACS(Centre Européen de Recherche et de Formation Avancée en Calcul Scientifique)にて航空機エンジン設計に使用されるソフトウエア開発に従事
2021-現在
ポスドク研究員:INRIA(フランス国立情報学自動制御研究所)にて人工知能に関する研究に従事

私は幼い頃から航空宇宙開発に興味があり、宇宙系の研究室がある北大工学部への進学を選択しました。その後は別記の履歴の通り、昨年まで何かしら航空宇宙に関連のあることをしてきました。一方で、ずっと夢だったことを航空宇宙で有名なフランスで実現したことに満足しつつも、一抹の物足りなさを感じていました。

航空宇宙開発というのは、そこそこ歴史のある領域です。そのため私の仕事内容も、「革命的なイノベーション」というよりは、「すでにある技術の小さな改善」ということがほとんどでした。これは他の歴史ある産業も同じだと思います。その折、巷で話題の人工知能が航空宇宙の現場でも注目を浴び始めてきました。人工知能は航空宇宙ほど研究されておらず、「革命的なイノベーション」を起こす可能性がより高いと私は考え、現職の人工知能系ポスドク研究員へ今年始めに転職しました。

現職は航空宇宙とは直接関係ありませんが、将来的に私が現在の経験やスキルをもって航空宇宙に戻る可能性もあります。もし、20代の頃に夢見た「革命的なイノベーション」を航空宇宙の分野で実現できるようなことがあればこれほどの喜びはありません。


読者の皆さんはいま二十歳前後で、それぞれ大志を胸に抱かれているかと思います。私の履歴を見て、全てが順調だと思う方がいるかもしれません。でも実際は幾多もの挫折、方向転換、妥協の連続です。やりたい仕事、行きたい会社や学校に行けたと思ったら想像していたのと違うこともよくありました。皆さんの中には「〇〇に就職できなかったら人生終わり」や「〇〇の職業につけなかったら絶望する」と思っている方もいるかもしれません。私もそうでした。でもその夢の職業や会社が想像と違うこともあるし、逆に妥協して選んだものに思いも寄らない興味が湧き、それが天職になることも十分ありえます。目標を絞って突進することも重要ですが、ときに大胆な方向転換もためらわない柔軟性を持ち合わせることが、皆さんの人生を豊かで多様なものにすると私は信じています。それでは、皆さんのキャリアに幸あれ。