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工学研究的フリートーク。

工学部発のア・レ・コ・レ

微粉炭と新しい水処理の研究開発

環境工学部門 環境リスク工学
教授 松井 佳彦

[PROFILE]

出身地
北海道
研究分野
水環境工学
研究テーマ
水質と水処理

水道水の原水には様々な除去すべき汚染物質が含まれています。昨年は有機フッ素化合物汚染がNHKクローズアップ現代+に取り上げられました。このような有機汚染物質は活性炭で対策しますが、その除去効率は高いとは言えません。

そのような中で、世界で初めて活性炭粒子を直径1マイクロメートル以下まで微粒度化するなどして、高効率な浄水処理技術の開発を行っています。この技術は、横浜市、佐世保市、大牟田市などの多くの新しい浄水場で取り入れられ、適用が広がっています。さらに、微粒度化した活性炭、SPAC(superfine powdered activated carbon)は様々な国でも研究が行われるようになりました。

数年前にある視察団体メンバーの一人としてある浄水場に見学に行ったときのことです。その浄水場では浄水薬品の凝集剤の主成分であるアルミニウムが水に残留するなど、これまで非常に苦労してきたとのことでした。しかし、最近開発された高塩基度型の凝集剤を使って問題が解決され大変助かっていることを嬉しそうに説明してくれました。私が高塩基度凝集剤による浄水の開発者であることを知らないようでしたが、そのことは何も言わずに質問をしながら実際の仕事の話を聞いていました。研究成果が社会に還元されて行き、社会に貢献していることを実感しながらとても嬉しい時間でした。

微粒化した活性炭
浄水場における微粒度活性炭の実用化
(圧力タンクの中で微量汚染物質の吸着による浄化が進んでいる)
分離膜を使った浄水場
(円筒形容器の中に分離膜が格納され、微量汚染物質を吸着した微粒度活性炭やその他濁質等のろ過を行っている)