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当たり前に疑問を抱くことによる工学の発展:鋼構造物における摩擦挙動

土木工学部門 構造デザイン工学研究室
助教 佐倉 亮

[PROFILE]

出身高校
滋賀県立東大津高等学校
研究分野
鋼構造、橋梁工学、構造工学
研究テーマ
鋼部材の非線形挙動解明による橋梁の設計・維持管理手法の高度化

鋼道路橋は数千・数万という部材が連結されることで、構造物全体としての安定性・安全性を発揮します.私はその連結部分(図1、ボルト連結部)がいつ・どのように壊れるのかについて研究しています。

ボルト連結部の安全性を評価する観点の1つに、静止摩擦状態から動摩擦状態に移行する時点(すべり耐力)の定量把握が挙げられます。工学における摩擦問題は、一般に最大静止摩擦係数を一定値として考えて評価されます(クーロン摩擦則)。クーロン摩擦則については中学・高校の基礎物理で学習しますが、この当たり前は今回の対象物でも成り立つのか?という疑問を調べました。摩擦面に作用させる圧力を変化させた摩擦係数試験を行った結果、圧力の増加に伴い摩擦係数が低下することが明らかになりました(図2)。この結果を用いることで、摩擦面に作用する圧力の違いによるすべり耐力の変化を推定でき、ボルト連結部が壊れるタイミングを評価できるようになりました。

私は社会基盤構造物を対象として、我々が当たり前と思っている事象に疑問を抱き、実現象の解明を進めることで、皆さんの生活の安全を支えていきたいと思っています。

図1 鋼道路橋のボルト連結部
図2 摩擦係数試験結果