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工学研究的フリートーク。

工学部発のア・レ・コ・レ

毒性学的観点からの「安全な水道水の供給」への貢献

環境工学部門 環境リスク工学研究室
教授 松下 拓

[PROFILE]

出身高校
大阪府立茨木高等学校
研究分野
環境工学、浄水工学
研究テーマ
農薬分解物の毒性評価、UVベースの浄水処理、水道水カルキ臭
研究室ホームページ

田畑で使われた農薬は、雨が降ると川へと流れ込み、その下流にある浄水場にて、水道水の原料の河川水に混ざった状態で取り込まれます。多くの農薬は、一般的な浄水処理では除去できず、処理の最終工程で消毒のために入れられる塩素と反応して分解されます。しかし、分解といっても完全になくなるわけではなく、少し形が変わるだけで、水道水中に残ってしまいます。農薬自体は、いろいろな毒性試験を経て、安全なものだけが使用を認められていますが、飲み水を造る際の塩素処理でできあがってしまう分解物には、大きな注意が払われていません。これでよいのでしょうか? 私の研究グループにて、農薬と塩素を反応させた試料の毒性を評価したところ、反応により毒性が大きく増加する農薬があることが分かってきました。これは、塩素との反応により、農薬が毒性をもつ分解物へと変換されたことを意味します(機器分析により物質も特定しました)。私たちは、これらの毒性物質を水道水質基準に組み込むべきではないかと提言しており、その結果、いくつかの物質が組み込まれました。水道水の安全性をより高めるため、今後も、毒性学的観点から注意すべき物質を提言していきたいと思っています。

研究室学生による毒性試験の様子