特集・研究紹介

工学研究院・工学院の
先駆的な技術を発信します。

No.433 2023年12月号

女性研究者のチャレンジ!

特集 03

フィールドワークから人々の暮らしを考える Understanding human's lives through fieldwork

このまちを、暮らしをどうしていきたいですか?

建築都市部門 建築計画学研究室 准教授
野村 理恵

[PROFILE]

出身高校
京都府立洛西高等学校
研究分野
建築計画学、農村計画、住居学
研究テーマ
牧畜集落の担い手育成に資する牧畜民生活領域の保全計画

モンゴル高原に見出したフィールドワークの魅力

モンゴル高原の草原をジープで駆け抜け、見つけた牧畜民の家を訪問し、実測して図面化する、というフィールドワークを大学院博士後期課程で数年間に渡り行っていました。そもそもフィールドワークに興味を持ったのは、高校生の時に行った「大モンゴル展」がきっかけです。「いつか海外に行けたら」と漠然と思っていたところ、修士時代に内モンゴルからの留学生と出会ったことで自分の夢の原点に立ち返り、現在に至ります。もちろん海外調査に困難はつきもので、どこにも囲いのない青空トイレや砂漠でお風呂に入れない日々、モンゴル語での意思疎通など挙げるとキリがありません。安全性を考慮して控える調査もありましたが、それでも調査先の女性や子どもと仲良くなることで、これまでの男性中心の調査結果からは見えてこなかった日常に密着した暮らしの特徴が、浮かび上がることもありました。自分自身が研究する意義を見出した瞬間でもあります。

図1 移動式テントのなかでヒアリングする様子 Figure 1 : Interview survey in a mobile tent in Inner Mongolia

建物の整備やまちの将来像人々の暮らしを考える学問

私の専門分野は建築計画学です。建築物単体の設計だけでなく、対象エリア全体を考える都市計画や農村計画、住まいの環境にフォーカスする住居学なども含みます。工学部のなかでも社会科学の視点が強く、常に人間と環境の関係を考察しながらよりよい居住空間の創造を目指しています。北海道に来てからは地方都市や農村部に足を運ぶことが多くなり、少人数でいかに充実した暮らしを実現できるかというテーマで研究を続けています。特に意識しているのは地域の現状把握にとどまらず、そこから具体的なアクションにつなげることです。公共施設の整備に関わることもあれば、住民との議論を重ねてまちの将来像を描くというソフト面の計画に関わることもあります。いずれにせよ、その地域をじっくり歩いてまわること、人々と話をすること、一緒に将来を考えることを基本としています。

身近な生活から将来のまちの姿を考え、実践する工学研究者に男性・女性の向き・不向きはなく、むしろ圧倒的に人材不足である現状を考えると、これからますます各地で必要になると考えています。ぜひ一緒にフィールドワークをしてみませんか?

図2 公民館の建替えに向けた住民ワークショップ Figure 2 : Workshop on rebuilding the community centre in Hokkaido

Technical
term

フィールドワーク
文化の異なる社会に一定期間滞在し、人々とその文化を現場の事態に即して調査研究すること。野外調査と訳される。