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工学部発のア・レ・コ・レ

軽~い軽水素は泡へ、重-い重水素は水へ
─水電解と燃料電池による水素同体分離─

材料科学部門 環境材料学研究室
准教授 松島 永佳

[PROFILE]

出身高校
千葉県立千葉高等学校
研究分野
電気化学
研究テーマ
燃料電池を使った水素同位体分離
研究室ホームページ

皆さん、水素同位体って聞いたことありますか?近未来の水素エネルギー社会にとって、水素同位体は新しい材料として期待されています。最近では、次世代型発電所として核融合炉の完成に注目が集まっています。そこでは水素が燃料として活躍しますが、皆さんが実験室で扱う軽水素ではなく、重水素やトリチウムと呼ばれる重い水素同位体が必要となります。しかし、これらの元素は自然界には微量しか存在(例えば、海水中に含まれる重水素は約0.014%)しないため、その分離には膨大なエネルギーが消費されます。

私は、水電解や燃料電池を使ったちょっと変わった分離方法を研究しています。水を電気分解すると、軽水素は分解されやすく泡となり、重水素は反対に水として残ります。一方、水素ガスを燃料電池で反応させると、今度は重水素が水に戻り、軽水素はそのままガスとして燃料電池から排出されます。もちろん発電エネルギーも同時に得られる利点もあります(図1)。私たちの研究室では、この不思議な効果を利用した水電解と燃料電池を組み合わせた省エネ型分離装置を研究しています。もし興味があれば、カオスな装置を見学しに何時でもどうぞ(図2)。

水素同位体の濃縮概念図(図1)
学生達が日々工夫しながら組み立てた濃縮装置(図2)