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多彩な面々による、
工学研究的フリートーク。

工学部発のア・レ・コ・レ

北海道大学病院陽子線治療センター

工学研究院
量子理工学部門
量子ビーム応用医工学研究室
准教授 松浦 妙子

陽子は、人体に打ち込まれると、一定の深さで周囲に大きなダメージを与え、急ブレーキがかかったように止まります。X線回折で有名なウィリアム・ブラッグ卿がこれを発見しましたが、現在ではこの性質をがん治療に生かした陽子線治療が、世界各国で行われています。

北大でも、医学部、工学部、日立製作所が力を集結して陽子線治療センターを立ち上げ、医理工連携で最先端の治療が日々行われています(写真1)。工学部は、放射線の知識をもとに、がんに正確にダメージを与えるための手法や、患者さんの苦痛を軽減するための照射法を開発しています。

たとえば、ビームをぎざぎざフィルターに通すことで、陽子が止まる位置を一気に分散させ、これまで時間の掛かっていた照射を短く済ませることができました(写真2)。

また、最近ではビームから発生する小さな”音”を使って、見えない放射線を見ようとしています。このことにより、狙った位置に正確にダメージを与えることができるのです。

工学の知識を使って誰かの病気を治すことができたら、すばらしいと思いませんか?

写真1 陽子線センター治療室
写真2 ぎざぎざフィルター