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多彩な面々による、
工学研究的フリートーク。

北大を知り、
北大で学ぶ

早稲田大学 理工学術院創造理工学部 社会環境工学科 教授
北海道大学大学院工学研究院 客員教授
佐藤 靖彦

[PROFILE]

出身高校
北海道室蘭栄高等学校
1989年3月
室蘭工業大学土木工学科卒業
1991年3月
北海道大学大学院
工学研究科土木工学専攻修士課程修了
1994年3月
北海道大学大学院
工学研究科土木工学専攻博士課程修了
1994年4月
北海道大学工学部助手
2005年4月
北海道大学大学院工学研究科助教授
2007年4月
北海道大学大学院工学研究院准教授
2018年4月
現職

歩み

私は、北方圏環境政策工学専攻の前身となる土木工学専攻の博士課程修了後に、構造工学講座(現在の維持管理システム工学研究室)に助手として採用され、24年間北大での教育と研究活動に携わることができました。

私が在籍していた研究室は、コンクリート構造の力学と設計に実績を有する伝統ある研究室です。恩師の角田與史雄先生(北大名誉教授)は、限界状態設計法の導入を牽引された方です。また、角田先生の恩師であられる故横道英雄先生(北大名誉教授)は、鉄筋コンクリート(RC)とプレストレストコンクリート(PC)の特徴を併せ持つPRC構造という新しい構造を生み出した方です。そのような歴史と実績のある研究室に身を置けたことは大変光栄でした。そしてこの春からは、私の後任として教え子である松本浩嗣さんが着任されます。大変嬉しく思うとともに、大きな期待を寄せています。

財産

24年間の研究活動では、色々なことに取り組みました。具体的には、3次元材料非線形有限要素解析の開発と設計・維持管理への応用、メゾレベルによる現象の解釈とメゾとマクロを組み合わせた解析法の開発、化学と力学を融合させた建設化学の創設などが挙げられます。生物のバックグラウンドがないにもかかわらず、微生物を使ったコンクリートのリサイクルに取り組むといった無謀な挑戦もありました。若かったなと思います。

その研究室での活動の中で、多くの学生と出会うことができました。指導した学生は、60名くらいでしょうか。その中から12人の博士を送り出すことができました。大学や研究機関で研究者として活躍している教え子が多く、早大に移ってから、彼らとの共同研究が深まっています。

24年間で多くの思い出が詰まっているのはやはり助手時代です。当時は時間もあり、学生達と一緒に実験や解析を行いました。しばしば、学生と徹夜をすることもありましたし、論文締切り直前の休日に、自宅に学生が来たこともありました。元気のある学生達に恵まれ、研究者として一番大切な助手の時代をじっくりと楽しく過ごすことができました。あの時間、そして、24年間に出会った学生達は私の財産となっています。これらからは、その財産をもっと輝かせたいと思っています。それゆえ、東京での定期的な交流の場を作りました。これまで育ててきた教え子達と協働し、色々なことに取り組んでいこうと思っています。

勧め

大学の工学系学部は何のために存在するのでしょうか。定量的な表現がなじまない芸術などのやわらかな要素を加えつつ、工学や科学を通じて社会に貢献することだと思っています。論文を書くことはそのための一つの手段であり、論文を書くための研究はその視点での研究とは言えません。もちろん、今の社会の価値観や求められるスピードに従順である必要はありません。大学や社会が大きく変わりつつある今、レジリエントな意思が求められます。

そのために、学生時代から是非、今の社会に繋がる努力をしてください。その方法は、インターンシップ、学会活動、OG・OBとの交流などたくさんあります。特に、OG・OBとの交流を大切にしてください。北大は、東大や東北大と同じように全国から学生が集まる全国区の大学であり、また、国際化も進んでいます。OG・OBは、日本全国さらには世界に広がっています。OG・OBを通じて社会との繋がりを深めることは、伝統ある北大で学ぶことの意義だと思うのです。

北大の魅力は、「抜群の研究環境」と「類い稀な自由さ」にあると強く思っています。そのよう環境を活かせるかどうかは皆さん次第です。積極的に飛び込み、失敗を恐れず、新しいことに挑戦してみてはいかがでしょうか。それを受け入れる大きさが北大にはあるのですから。

北大時代の教え子と
北大に残った学生と早大での一期生との合同ゼミの様子