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多彩な面々による、
工学研究的フリートーク。

卒業生コラム

ロケットを、チームを、未来を作る

インターステラテクノロジズ株式会社
開発部 エンジニア
軌道投入用ロケット「ZERO」開発
プロジェクトマネージャ 金井 竜一朗

[PROFILE]

出身高校
北海道釧路湖陵高等学校

2011年3月
北海道大学工学部 機械知能工学系 卒業
2011年4月
北海道大学大学院工学院 機械宇宙工学専攻 入学
2013年9月
北海道大学大学院工学院 機械宇宙工学専攻 修士課程修了
2015年2月
インターステラテクノロジズ株式会社 入社
2018年6月
観測ロケットMOMO 2号機 の打上げにプロジェクトマネージャとして従事
以降、MOMO 2号機の実験後解析プロジェクトと次期ロケット開発プロジェクトを兼務

「北海道から宇宙へ!」の遺伝子

私が北大受験を決めた2005年は、ちょうどCAMUI型ハイブリッドロケットで「北海道から宇宙へ!」という機運が報道等で盛り上がっていた時でした。その中心にいる永田晴紀教授の指導を受け、現在「北海道から宇宙へ!」の中心で自分がインターステラテクノロジズ(以下IST)で研究開発の陣頭指揮を執っているというのは、ちょっと出来すぎな気がしなくもないですが、これも数多くの先達のおかげと思います。ISTに入社した時(実は博士課程の真っ最中でした)に指導教員の永田教授が仰った「宇宙への露払いをよろしくお願いします」という言葉は、いつも頭の中に響いています。

打上げの失敗、実験としての失敗

ISTで一番有名なのは、おそらく2018年6月の観測ロケットMOMO2号機打上げ実験だと思います。高度100kmを目指して打ち上げられた2号機は、しかし離床後わずか4秒でエンジン停止しました。機体はそのまま発射台至近に落下、ほぼ満タンだった推進剤が炎上するという事態になったのです。

打上げ自体は完全なる失敗ですが、その後得られたデータの解析、機体の分析、追加実験などから、失敗の原因は明らかになりました。さらに、失敗の原因を未然に見つけることができなかったか、まだ見ぬ失敗の原因を見つけ出せないか、という観点から社内の組織づくりや、試験体制の改良を現在進行形で行っています。

社中でよく話に上がるのが「データが取れれば実験としては無駄ではない」ということです。大学宇宙工学の分野で、失敗をノウハウとして蓄積していこうという動きを先駆的にやっている先生の指導を受けていたこともあり、失敗に対する考え方はすんなり受け入れることができました。失敗を恐れず、失敗から学び、実験手法も含めてゼロから研究開発していくという観点では、かなり研究室で行われていることに近いと感じています。

プロとして、ジェネラリストとして

ISTは現在22人のスタートアップ企業で、環境は日々ドラスティックに変わっています。半年に1~2割で増員していて、社会経験を積んでから中途入社した中で、3人は同じ研究室出身の後輩です。プロジェクト遂行には、幅広い工学的な知識だけではなくチームを改善し続ける手法、経営の知識も必要です。それらを大学の時に学べる環境にあったのにうまく活用しきれなかったことを後悔しながら、日々勉強を続けています。もちろんロケット工学のプロフェッショナルとして自分を研ぎ澄ましていくことも意識し続けています。

学生生活や研究活動で得られるのは、工学的知識だけではなく、自律的に仕事を進めるための思考力、判断力です。それに行動力が伴うと、技術者として、そしてマネージャとして無敵になれます。ぜひ自分のプロフェッショナルとしての未来を思い描きつつ、将来的に求められるジェネラリストとしての周辺知識も磨いて、社会に大きな足跡を残す仕事が出来る人になっていきましょう。

燃焼実験後には毎回集合写真を取ります。この時は筆者(一番右下)が30歳で最年長
2017年7月のMOMO初号機打上げ
提供:インターステラテクノロジズ株式会社