VOICE
社会に出るまでに備えたい素養って?
大学院工学研究院長・工学部長
応用化学部門
化学システム工学研究室
教授 増田 隆夫
[PROFILE]
- 出身地
- 岐阜県
- 趣味
- ゴルフ
- 大学生に向けてひとこと
- 大学は「求めよ! さらば与えられん」の環境です。積極的に専門性を深め、人間性を高め、歴史観を深めてください。
私は、終戦後12年経った時に岐阜県大垣市を北に上がった所(当時の地名は何某郡何某村と呼ばれていました)の専業農家の末っ子として生まれました。曾祖母も含めて8人家族の中、幼少期から高校まで両親の背中を見ながら、天の河が見える夜遅くまで農作業の手伝いをしていました。そのような環境ですので、大学生になったことが村では評判になり、さらに大学院修士課程に進学した時には、近所の人から「大学院とは???」「よく分からないけど勉強が好きなんだ……」と言われ、博士後期課程に進学するにいたっては「ずっと働かないの??」等々言われました。読者の皆さんも博士後期課程に進学すると少しは似た経験をするかもしれません。
工学系は多様な分野から成っていますので、それぞれの分野で皆さんはこれから専門性を深めていかれます。そして活躍の場所を世界に広げることになります。その際に必要なことは相手からRespectされ、それに基づくヒューマンネットワークを形成することです。この目的を達成するための手段として、専門性が高いことはもちろんですが、それ以外(それ以上と思っています)に二つの事が必要と思います。
一つは、真摯な振る舞いです。一見して難しそうですが、実は簡単です。亡父の言葉として「自分の知らないことを少しでも知っている人は先生と思え。それは何でも良い」を紹介します。こうなると自分以外は全て先生になってしまいます。そうなると、ぞんざいな言葉使いや振る舞いはできなくなります。
二つ目は日本(留学生は母国)人としてのアイデンティティに誇りを持ち、自国についてその慣習が成立した経緯も含めて歴史を良く知ることです。海外の人から「どうして、日本は**なのか?」と聞かれたら、歴史観を持って答えると必ずRespectされます。これが本当のグローバル人材と思います。専門性の深さの優劣が日々変動することと比較すると、歴史の知識の重要性について納得できると思います。
自国の歴史と世界の歴史を良く知ることで、王朝が繰り返された東洋の国と、外部の要因で大きく変動を続けた欧米との考え方の違いもボンヤリと理解できます。
今は、義務教育ではなく自発的に大学に居るわけです。大学は「求めよ!さらば与えられん」の環境です。専門性を深めることはもちろんのこと、人間性を高め歴史観を深めていただきたいと願っています。