学生の声

固体物理学研究室 修士課程1年 早坂 恭平 君(釧路湖陵高卒)

早坂 恭平 君

私の応用物理学科(旧称)での四年間を簡単に振り返ります。まず、一年目は基礎的な数学や物理を主に勉強しつつ、一般教養を含めた幅広い内容を履修します。二年目には、一年次の成績を基にした学科分属が行われ、ここから三年の終わりまでは、物理の専門科目をみっちり勉強します。

また実験や宿泊研修もあります。実験では、幅広いテーマがあり、研究への関心が深まります。宿泊研修は四年次の研究室を決めるのに参考になり、飲み会もあるので同期の仲間や先生方と親睦を深めることができます。

四年になると、研究室に配属され、卒業論文を書くことになります。応用物理学科の先生・先輩方はとてもわかりやすく指導して下さり、研究生活を送るには最高の環境といえるでしょう。最後になりましたが皆さんが応用物理学科に少しでも興味をもってくれたら幸いです。


卒業生の声

株式会社CIJ ワイドビジネス事業部 北海道支社 大坪 ゆうき さん(94年修士卒)

卒業研究は一生の財産

大坪 ゆうき さん

学生時代の思い出として一番忘れられないのは、卒論、修論の執筆にとても苦労したことです。書こうとしても一向に字数は増えず、途方にくれていたことがつい先日のように思い出されます。

私は、学生時代、2次元格子におけるフォノンの伝播について研究していました。パソコンを使うのも初めて、プログラムを組むのも初めての状態で Fortranに悪戦苦闘しながら行ったシミュレーションの結果は、なんとエネルギー保存則を見事に覆す結果となりました。エネルギーが伝播する過程で、増加していったのです!そんな失敗をする私を、暖かくまた時には厳しくご指導くださった先生方の根気と熱意には今でも感謝しております。

エネルギー増大の法則を発見し損ねた私ですが、プログラミングの面白さに引かれて、卒業後はソフトウェア開発の仕事を選びました。論文を書いた際に鍛えられた情報を収集し分析する能力、分析結果を表現する文章作成能力、そしてプレゼンテーション力は、社会人になって役立ちました。ですから学生の皆さんは、是非とも論文には真剣に取り組んでください。一生の財産になります。また、学問以外の学生生活も楽しんでもらいたいと思います。

ITマスターとしてセミナーを企画・運営

今一番使われ、また、流行っているプログラム言語は、やはりJavaでしょう。携帯でもよく使われています。Javaのコーヒーカップのロゴを見たことがある方は多いのではないでしょうか?Javaについては札幌市も注目をしており2002年、2003年にはJava技術に、2004年にはオープンソースに特化したITマスターを認定しました。この制度の知名度はまだまだ低いのですが、高いレベルのIT技術力を得ている個人を札幌市が独自にマスターとして認定し、その人材をアピールすると同時に、札幌全体の技術イメージを高めることを目的とするものです。

私は2003年のJava技術に特化したITマスターに認定されました。ITマスターの活動は、技術者向けのセミナーを企画し、札幌市内の技術者や自分たちのスキルアップを目指すものです。去年は、“何かをやりたい”というITマスターたちが集まって、札幌初の試みであるJavaの最新技術をテーマにしたセミナー「Java Festa in SAPPORO 2004」を札幌コンベンションセンターで開催しました。私は中心的なスタッフの1人として企画・運営に関わりました。この企画は、ITマスターの活動計画を立てた際に「少人数対象のセミナーを数回実施するより、Javaカンファレンス(本家アメリカではJava One という名前で開催されています)のようなものを札幌で開催できないか」という発案から始まり、好評を博するものとなりました。続けて、2005年12月9 日にも開催することが決定し、今度はJavaのお祭りとしてではなく、より地域の活性化に役立つものとしたいと思っています。

景気が悪いと言われている北海道ですが、こうした地道な取り組みが積み重なって元気な札幌、そして元気な北海道となり、最新のIT技術発信地となる日を夢見ています。みなさんも一緒に北海道を盛り上げましょう!


独立行政法人 産業技術総合研究所 稲場 肇 さん(93年修士卒)

稲場 肇 さん

研究内容の説明をするとき、やっていることをすぐに説明したいのは山々なのですが、背景や歴史から入らないとなかなか理解してもらえません。物理系は特にその傾向が強く、物理系以外の人、中でも親戚に研究内容の説明をすることは恐怖だという方は多いのではないでしょうか。私が現在携わる研究もその例に漏れません。しかし、大変興味深い背景と歴史がありますので、そちらを中心に、さわりだけ説明させていただこうと思います。

1960年にレーザが出現して以来,光の周波数を測ることは、常に重要なテーマでした。光の速さ=光の周波数×光の波長ですから、あるレーザの周波数と波長を測るとその積は光の速さとなります。実際、1980年ころまではこのように光の速さを測定する研究が多数行われてきました。しかし、1983年にメートル(長さ)の定義が変わり、「光の速さは299792458m/s」となりました。どうしてそのような改訂があったかは省略しますが、本当の光の波長を知るためにはその周波数を測ることが必要になりました。光の周波数は非常に高く、例えば波長633 nmヘリウムネオンレーザの周波数は約474 THz(テラヘルツ:1兆ヘルツ)です。このような高い周波数を扱える電子デバイスは現在なく、何らかの方法で分解して測ります。1999 年頃までは,レーザの周波数を測定することは大変で、部屋いっぱいの装置群、数人の研究者と数年のプロジェクトが必要でした。それもある一つのレーザを短期間測るためだけの装置で、いつでも動くようなものではありません。

光コムは光周波数

そのような状況の中,2000年頃に、フェムト秒モード同期レーザが発生する「光コム」(図1、2)を用いた光周波数計測の提案がなされました。光コム中では縦モードが周波数軸上で等間隔に並んでいるため、周波数のものさしとして利用することができます。このブレークスルーにより、光周波数計測は1 台のレーザと1 人の研究者で扱える技術となりました。これは今年2005年のノーベル物理学賞の授与の理由となっています。私は2001年度より前任の方より光コムの研究を引き継ぎました。これまでに、光コムに連続発振レーザを位相同期させることにより任意の光周波数を発生させる「光シンセサイザ」の研究などを行っています。さらに、光コムを用いてレーザの光周波数を測定するサービスを世界に先駆けて今年からスタートさせました。ここ最近は、長時間連続で動作させるのに適しているモード同期ファイバレーザにより光コムを発生させる研究に取り組んでいます。

光コムは光周波数

在校時には、天体スペックル像の画像処理の研究をさせていただいていました。一見、現在のテーマとは光を扱っているということ以外あまり関係なさそうですが、そうではありません。むしろ共通点の多さに驚くことの方が多いくらいです、というわけで、皆さん頑張って研究してください。将来研究をする人はもちろん、そうでない人にとっても、それはいろいろな機会に役立つでしょう。かくいう私も、在校当時、勉強と研究のギャップに戸惑い、多大なご指導をいただきました。先生方には深く感謝しております。在校生の皆様には、体をこわさない範囲で、研究、趣味、その他何事にも取り組んでいただきたいと思います。