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窒素ドープ炭素材料のメタルフリー触媒としての応用

近年の貴金属の価格高騰や資源不足に対応するため,貴金属触媒の使用の大幅な低減が求められています。当研究室では炭素表面に窒素をドープした新規材料が酸塩基触媒やカソード電極といった機能を有することに着目し,既存の貴金属触媒に代替するメタルフリー窒素ドープ炭素触媒の開発とその応用について研究を行っています。

加圧二酸化炭素存在下での触媒反応

有機化合物液体を二酸化炭素で加圧すると液相に二酸化炭素が溶け込むことで体積膨張が起こり,同様に減圧することで二酸化炭素の除去が容易に行えます。これは反応基質を有機溶媒に溶解させた状態に似ていますが,溶媒の除去が容易なため抽出工程が必要なく,回収した二酸化炭素は再利用が可能な点で大きく異なります。さらに本反応系では従来の反応に比べて反応速度が増加し,生成物選択制も向上することが明らかになっており,反応に直接寄与しない二酸化炭素の本反応系における役割とその化学的機能の解明が重要な課題となっています。

二酸化炭素の化学的固定化

二酸化炭素は安価で大量入手が容易であるので,これを化学原料として有効利用することが望まれています。しかし,これを実現するためには,二酸化炭素は反応性が低いので,有効な触媒の探査や反応条件の最適化が必要です。本研究では,これらのことを環状カーボネート,アルキル尿素,環状ウレタンなど工業的に有用なさまざまな有機化合物を合成する反応について行なっています。また,これらの反応の多くではホスゲンや一酸化炭素のような有毒な物質が現在使われています。したがって,本研究の目的を達成すると,現存する合成プロセスをより安全で環境負荷の少ないものに代えることができます。

スメクタイトの調製とその触媒作用

スメクタイトは層状粘土化合物の一種であり,その細片が層間に存在することで多孔性が発現し高い比表面積と大きな細孔容積を有します。また,スメクタイトは水熱法で合成でき,その過程で骨格内に種々の金属を組み込むことができます。本研究ではCo含有スメクタイトを種々の条件で調製し,そのキャラクタリゼーションを行うとともに,これらを環境汚染の軽減や石油代替燃料の製造といった観点から注目されているFischer-Tropsch反応に用い,触媒調製条件がその性能にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的としています。また,Zn含有スメクタイトを用いたグリセリンと尿素から環状カーボネートを合成する反応についても同様の検討を行っています。この反応も,近年バイオディーゼルの副生成物としてその生産量が増加しているグリセリンの有効利用という点で重要になっています。

水素製造触媒プロセスの開発

石油に代替する次世代エネルギーの開発が大きな課題となっている近年,環境負荷の小さい燃料電池の開発が盛んに行われていることから,その主燃料となる水素の製造は最も重要なテーマの一つであるといえます。水素はおもに炭化水素を原料とする製造プロセスが知られており,当研究室ではジメチルエーテル(DME)の水蒸気改質による水素製造反応について研究を行っています。種々の担持金属触媒の設計とその表面構造が反応に与える影響評価,本反応における反応メカニズムの解明がおもな目的です。

環境浄化触媒の開発と高機能化及びその触媒作用機構の解明

近年,地球資源の枯渇と環境問題の観点から,省エネルギーで二酸化炭素排出量の少ないディーゼルに注目が集まっています。しかしながらディーゼル車はガソリン車に比べて燃焼室内が空気過剰であるためNOxが発生しやすく,排気中の残留酸素が多いことから三元触媒を用いることができません。そこで本研究ではNOxの新しい除去方法として,無毒かつ非発ガン性であるジメチルエーテルを還元剤に用いたNOxの還元法の開発を行っています。アルミナを担体とする担持金属触媒を設計することで触媒活性の向上を目指すと共に触媒の高機能化を試み,反応機構の解明を目的としています。