工学部発のア・レ・コ・レ
振動圧縮荷重を用いた表面改質:
Scanning cyclic pressによる金属の常温窒化技術
機械・宇宙航空工学部門 材料機能工学研究室
助教 藤村 奈央
機械構造物や機械部品において材料の損傷は表面で生じることが多く、産業界では耐摩耗性や耐食性、耐久性など諸特性を改善するため様々な表面改質が実用されています。表面改質は、材料表面に特殊な処理を施して組成や構造を変えることで、母材が持つ性質に新たな機能を与える技術です。例えば、表層に窒素を熱で拡散させ窒化物層を形成する窒化や、熱処理、塑性変形を利用した手法などがあります。
私たちの研究室では、振動する圧子で数kgf程度の圧縮荷重を材料の表面に繰返し加えることで表層にnmオーダーの小さな結晶粒から成る組織を作るScanning cyclic pressという技術を開発しています。これまでに、鋼や軽金属に本技術を適用した結果、表層に微細な組織が形成されました(図1)。また、表面の硬さが向上し、疲労寿命も延びたことから、本技術は金属の耐久性向上に有用な技術として期待できます。さらに、室温の窒素環境中でチタンを加工したところ、表面に窒化チタンが形成されました(図2)。従来、チタンの窒化には500度以上の高温で長時間の処理を要しますが、本技術では、機械的な振動によって、従来と異なる機構で常温でも窒化が実現できたと考えられ、メカノケミカル技術としての展開も期待されます。