北海道大学環境ナノ・バイオ工学研究センター

センター設置の趣意と目的

1 設置の趣旨

 2025年における世界の水問題の予測では、欧米と中国全域を含む世界的な水不足が生ずる。21世紀のキーワードである「持続的発展(Sustainable Development)」を実現するには、水資源の確保をダムによる貯水や長距離導水に依存する大規模集中の20世紀型パラダイムから、水の再利用や水循環の小規模化を含めた21世紀型パラダイムへの転換が必須である。また、単純大規模システムによる高速大量輸送技術を基盤とした一括的水供給と汚水排除によって、20世紀の都市水代謝を支えてきた近代上・下水道は、構造的な渇水と水質汚濁に対処できず破綻しようとしている。毎年10%増加するボトル水の売り上げに見られる国民の水道水離れ、環境ホルモンや医薬品由来有機物のような微量化学物質による水環境汚染、に対処するにも21世紀型パラダイムへの転換が不可欠である。また、産業や流域圏域で発生する各種廃棄物量の増加は、人類の生存を脅かすに至っている。廃棄物問題の解決にも、水問題と同様に再利用・循環型社会へのパラダイム転換が必須である。

 21世紀COEプログラムでは上記のような現状を打破し将来の持続可能な発展に貢献するために、伝統的な3つの学問領域(環境工学、土木工学、資源工学)と先端的学問分野(バイオテクノロジ-、ナノテクノロジ-)を融合して、“流域圏の持続可能な水・廃棄物代謝システム”構築のための新たな“環境社会工学(Socio-Environmental Engineering)”の学問領域の確立を目指した。本21世紀COEプログラムでは、先端的技術と環境工学の融合を目指す下記の海外の諸機関の研究者との交流によって所期の目的の一部を達成した。

米国 アリゾナ州立大学Center for Environmental Biotechnology、Duke大学、 Rice大学
ヨーロッパ カールスル-エ研究所、IWW研究所(以上ドイツ)、デルフト工科大学化学・生物工学部、KIWA水道研究所、UNESCO-IHE(Institute of Hydraulic and Environmental Engineering)(以上、オランダ)、ノルウェ-科学技術大学(ノルウェー)
アジア ソウル国立大学、韓国先端科学技術院(KAIST)(以上、韓国)、シンガポ-ル国立大学(シンガポール)、台湾国立大学(台湾)等

 本センターは21世紀COEプログラムで構築した国際的、社会的ネットワーク及び国際会議、産学連携、地域連携を通じて醸成されたKnow howの継承と発展により、本学大学院生のためのIntensive course、若手研究者の国際力の涵養、国際会議の開催、JICAとJBICの国際研修コース、等の国際連携を一層進める。

 さらに本センターは、国際戦略本部、人獣共通感染症リサ-チセンター、公共政策大学院(公共政策学連携研究部)等と連携して、本学の国際化戦略の展開に貢献する。


2 主たる業務

 「環境ナノ・バイオ技術」に関する研究・教育を全学的に展開し、実験研究に関する学内インフラを整備する。また、そこから生まれる研究・教育成果を国際的に発信することで、現在、環境科学の国際シーンで急速に進行しつつある「先端技術との融合」の流れの中で、北海道大学が担うべき中心的な役割を、一層確実なものにする。そして、本センターの設立により、さらなる国際的な取り組みと世界へ向けた研究・教育成果の発信や、それを可能にするより豊かな学内外の共同研究体制を確立することを目的とする。

1.「環境ナノ・バイオ技術」国際研究拠点として、先端的研究の展開と研究成果の国際発信

1)国際会議の開催

2)国内外共同研究の推進

3)国内外拠点との新規連携及び連携強化

2.若手研究者の育成

1)「環境ナノ・バイオ技術の論理と実践」などに関する大学院共通授業を展開する。これらの授業は体験・実習型形式を含み、実験研究への関心を広く喚起すると同時に具体的な方法論を教授する

2)ポストドクター研究員や博士研究員などを受け入れ、研究の実践を通じた若手育成を行う

3)国内における「環境ナノ・バイオ技術研究」の中心として、他大学の研究者との協力のもと、PD・リサーチャーの受け入れ、サマースクールの開催などを行う。国外の主要拠点との間にも同様の協力を行う

3.共同利用施設としての学内外への貢献

1)学内外の研究者・大学院生を対象に、環境ナノ・バイオ技術研究のための施設提供と技術供与を行う(インターンシップ、コンサルティング)

=> センター事業計画

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