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現在の研究内容 量子井戸におけるスピン緩和 以下の解説や論文をご覧下さい。 「量子井戸のスピン緩和 : 緩和時間を制御する方法」 明楽浩史、鈴浦秀勝、江上喜幸、固体物理 49(11), 645-652 (2014). "Spin relaxation in a zinc-blende (110) symmetric quantum well with δ doping", H. Akera, H. Suzuura, and Y. Egami, Phys. Rev. B (2014) Hokkaido University Library HUSCAP "Spin relaxation in a quantum well by phonon scatterings", H. Akera, H. Suzuura, and Y. Egami, Phys. Rev. B (2015) Hokkaido University Library HUSCAP 2次元電子系におけるスピンホール効果 スピンホール効果とは、ホール効果の電荷をスピンに置き換えたもので、電流を流すことでそれに垂直な方向にスピン偏極が現れる現象です。スピンホール効果ではスピン軌道相互作用がホール効果の磁場の役割を担っています。この現象は2004年に半導体中の3次元電子系ではじめて観測されましたが、その直後の2005年には2次元電子系でも観測されました。これらの系で観測されたスピンホール効果は外因性である、すなわち不純物によると考えられています。 不純物分布は十分には制御できないだろうという印象を持たれているかもしれませんが、実は2次元電子系では結構精密に不純物分布を制御することができます。それは、2次元電子系がMBEやMOCVDという精密な結晶成長法を用いて作製されているからです。 本グループでは、不純物のポテンシャルを引力から斥力に変えたり、その分布を変調することでスピンホール効果がどのような様相を現すかということを主眼として研究しています。 "Extrinsic spin Nernst effect in two-dimensional electron systems", H. Akera and H. Suzuura, Phys. Rev. B (2013) Hokkaido University Library HUSCAP 【これまでの研究内容】 以下では、以前に行った「量子ホール効果の非平衡的側面」の研究について述べています。 研究対象 本グループでは電子系の輸送現象を理論的に研究しています。主な対象は、半導体ヘテロ構造に形成される2次元電子系です。この2次元電子系は、ナノスケールの構造に加工したり強い磁場をかけることで物性を著しく変化させることが可能であり、また、試料内の分布を探る空間分解測定も3次元系に比べて容易です。このような利点をもつ2次元電子系では、今後も多くの多彩な現象が発見されることを期待しています。 研究手段 研究手段は理論で、主に非平衡熱力学を用いています。非平衡熱力学は、輸送現象を扱うために非平衡状態に拡張された熱力学的手法であり、マクロなスケールの空間変動や時間変動を記述することができることが利点です。非平衡熱力学の基本方程式は、電子系の場合、電子数の保存を表す連続の式とエネルギー保存則の式です。これらの式に現れる電子と熱の流れに対しては、それぞれの流れの密度が電場(正しくは電気化学ポテンシャルの勾配)と温度勾配の1次式で表されるという線形応答の式を用います。1次式の係数が輸送係数であり、ボルツマン方程式や久保公式を用いて計算することができます。 非平衡熱力学は古くから存在する理論的枠組みで、すでに流体系や化学反応系などに適用されていますが、本グループは、非平衡熱力学を2次元電子系に応用し、スピンや擬スピンなどの多彩な自由度が引き起こす新しい時空間変動を開拓することを目指しています。 量子ホール効果の非平衡的側面 2次元電子系で観測された量子ホール効果とそれに関連する現象は、磁場中電子波のアンダーソン局在や2次元電子系の電子相関など物理的概念を研究する多様な場を与えてきました。しかし、もうひとつ忘れてはならないことは、量子ホール効果が非平衡状態で観測されていることです。量子ホール系ではさまざまな興味深い非平衡現象が観測されています。 量子ホール系の交流応答 量子ホール系の非平衡現象の中で本グループが現在取り組んでいるのは、量子ホール系の交流応答です。交流とは言っても数百ヘルツ程度の低振動数です。このような低振動数の交流に対する応答は直流応答と同じであると長い間考えられてきましたが、最近の実験で秒単位の時定数が存在することが明らかになったためこの振動数領域の輸送現象が新たに開拓すべき課題となりました。この長い時定数の起源は、量子ホール系において対角伝導率が極めて小さいことです。このことは量子ホール効果において対角抵抗率がほとんど消失することと関係しています。 交流における量子ホール系のホール電場分布 ホール効果は、ローレンツ力により電子がその進路を曲げられて試料端にたまり、試料内に一様な電場が発生する現象ですが、交流では電場分布はどうなるでしょうか。3次元では直流の場合と変わらず試料端にたまる電荷が試料内に一様な電場を作りますが、2次元では電気力線が2次元面からはみ出すことから電場が一様ではなく、振動数により電場分布が変化する可能性があります。 我々は交流を加えた量子ホール系のホール電場分布を計算し、ホール電場は試料端から振動しながら減衰するということを見出しました。実はこの振舞いは、ストークスが1851年に導出した振動平板上の粘性流体の流速分布の振舞いと全く同じです。この一致は、両者がともに拡散方程式の(時間に関する)振動解であることに起因しています。 "Crossover of the Hall-voltage distribution in AC quantum Hall effect", H. Akera, Physica E (2011) Hokkaido University Library HUSCAP 量子ホール系は試料端にエッジ状態をもつため、そこでは拡散方程式による記述が破綻しています。 そこで、エッジ状態を考慮し、試料端も含めてホール電場の全貌を明らかにする研究も行いました。 "Frequency dependence of the Hall-potential distribution in quantum Hall systems: roles of edge channels and current contacts", K. Shima and H. Akera, Physica E (2014) Hokkaido University Library HUSCAP |