応用物理学専攻 光物性工学研究室English / Japanese )

研究活動

時間分解型ポンププローブ分光

超短パルスレーザーを用いたポンププローブ分光により、 非平衡電子ダイナミクスを時間分解で観測します。
図は、高温超伝導物質の電子応答をヒートマップ(縦軸に温度T、横軸に時間tPpr)として表示しています。
平衡温度に応じた特徴的な電子応答が確認できます。

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異なる波長の光を位相を揃えて重ね合わせることで、超短パルス光を生成することができます。モードロックチタンサファイアレーザーでは、約10-13秒のパルス幅が実現されており、物性研究に広く用いられています。

このようなパルス光により電子を励起すると、電子系は非平衡状態に遷移します。その後、電子間相互作用や電子格子相互作用を通じて平衡状態へと緩和します。

ポンププローブ分光では、ポンプ光で励起した電子状態の変化を、遅延させたプローブ光による反射率や透過率の変化として検出します。

図は銅酸化物高温超伝導体 Bi2212の過渡反射率を示しています。超伝導相転移温度 TC ≈ 83 K 付近では、超伝導形成に伴う長い緩和時間が現れます。銅酸化物高温超伝導体では、Tc以上に擬ギャップ(PG)状態が存在します。時間分解測定により、超伝導(SC)成分とPG成分の異なる緩和ダイナミクスが観測されます。SC成分とPG成分の関係性を時間領域から解明することを目指しています。

  • T. Akiba, et al., Phys. Rev. B 109, 014503 (2024)
  • Y. Toda, et al., Phys. Rev. B 104, 094507 (2021)

コヒーレントクエンチ分光(3パルス型ポンププローブ分光)

ポンププローブ分光に相破壊を誘導するような強励起パルスを加えると、相転移の時間発展を捉えることができます。
図は、縦軸に強励起後の経過時間( tDP)、 横軸に tPpr をとった 電子応答のヒートマップです。
これにより、準安定な電子状態の時間発展が分かります。

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コヒーレントクエンチ分光は、3つの光パルスを用いた時間分解分光法です。 この手法では、まず強い光(相破壊パルス:Dパルス)を照射して、 超伝導状態などの秩序状態を一時的に壊します。 その後、ポンプ(P)パルスとプローブ(pr)パルスを用いた ポンププローブ分光によって、回復していく電子状態を観測します。

観測される反射率変化 ΔR/R は、 Dパルス照射後の経過時間 tDP に応じて変化します。 この信号は、常伝導状態から超伝導状態へと回復していく過程を反映しており、 その時間変化(緩和特性)から電子状態を判別することができます。

図には、代表的な tDP における ΔR/R が示されています。 経過時間によって、特徴的な信号の変化が現れます。 通常のポンププローブ分光と比較すると、 Dパルスを照射しない場合の信号は超伝導(SC)応答に対応します。 一方、Dパルス照射直後には、 擬ギャップ(PG)や励起準粒子(ER)に対応する常伝導状態が現れます。

さらに、tDP = 100 ps の信号は、 DパルスなしのSC応答とほぼ一致しており、 超伝導状態が回復していることを示しています。

タイトル図は、縦軸に tDP、 横軸に tPpr をとった 過渡応答振幅のマップ(密度プロット)です。 これにより、準安定な電子状態がどのように時間発展するかが分かります。

  • I. Madan,et al., Nat. Commun. 6, 6958 (2015)
  • I. Madan,et al., Phys. Rev. B 96, 184522/1-9 (2017)

コヒーレント分光(四光波混合)

ポンププローブ分光による非線形光学応答を利用すると、電子状態のコヒーレンスや多体相関を捉えることができます。図は半導体の2種類の励起子を励起した場合に観測された量子ビートです。

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四光波混合分光(FWM)は、物質に複数のレーザーパルスを入射し、 その相互作用によって生じる非線形光学応答を観測する手法です。

特に、2つのパルスを時間差をつけて照射すると、 物質中にコヒーレントな分極が生じ、その情報を反映した回折光が放出されます。 この信号は、励起された電子や励起子のコヒーレンス (位相のそろい具合)や緩和の様子を反映しています。

時間差を変えながら測定することで、 電子状態がどのように時間発展するかを調べることができます。 また、信号は特定の方向に強く現れるため、 微弱な信号でも高精度に検出できるという特徴があります。

この手法は、半導体や強相関電子系における 超高速ダイナミクスの理解に広く用いられています。

  • K. Shigematsu,et al., Appl. Phys. Express 9 122401/1-4 (2016)
  • Y. Ueno et al., Opt. Express 17, 20567 (2009)

トポロジカル分光(光渦)

非線形結晶の位置の変化に伴う第2高調波(SHG)の強度分布です。
焦点近傍では2つの光渦が対として現れ、伝搬とともに回転(Gouy位相に起因)する様子が観測されます。

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光渦は螺旋状の位相構造を持ち、軌道角運動量(OAM)を担う光です。中心に位相特異点を持ち、ドーナツ状の強度分布を示します。

光渦を物質に照射すると、軌道角運動量の移行や非線形相互作用に基づく特徴的なダイナミクスが現れます。

我々はコヒーレント分光を用いて、サブピコ秒時間領域での軌道角運動量の移行を実証しています。

  • Y. Toda et al., Opt. Express 31 11 17537-17546 (2023)
  • Y. Toda et al., J. Supercond. Nov. Magn.31, 753-756(2018)
  • Y. Toda et al., Opt. Express 18, 17796 (2010)