About 2010 CFM Lab.


研究室の目標

 工学・理学の諸分野において実現象を「複雑系」として捉える試みが注目されつつある. 非線形性で大きな自由度を持つ流体現象は典型的な複雑系の一つであり, その理解のために理論や実験によるさまざまなアプローチがなされてきたが,近年, 高性能コンピュータの利用を前提とした「数値シミュレーション」が 第3の方法として注目される. これを,流れに関する様々な複雑現象 -- 乱流,気泡流れ,燃焼火炎,流体騒音,流体振動 -- の解析,予測に適用し,工学設計に導入するには, 流れの物理的な理解とともに,合理的な数理モデル, 数値演算などの精度や計算効率,大規模データを扱う グラフィカル・インターフェース,また,それらを実現する コンピュータ・ネットワーク環境,といった機械・情報・物理学の 広範な応用が必要とされている.

 本研究室では,特に,非定常・3次元的な乱流現象の合理的な数値予測法として, ラージ・エディ・シミュレーション (LES) に着目して,工学応用を前提とした基礎モデル検討と解析ツール開発を進めている. 工学設計に役立つ流れシミュレーションを実現するために, (i) 現実の複雑な流れ現象を扱い,(ii) 精度(=誤差)と信頼性(=適用範囲) の正確な評価によって,a) 現象の要因分析 → b) 設計クライテリアの評価 → c) 機器性能の先行予測 を目指す.


次世代流体解析ソフトウェア FrontFlow の開発

 当研究室では, 乱流の数値予測法として注目される ラージ・エディ・シミュレーション (LES) の工学設計への実用応用を目指して, 次世代流体解析ソフトウェア FrontFlow の開発と実証研究を行っている. これまで, 実用流れ設計の複雑さを再現するため, 乱流の非定常3次元シミュレーション, 反応流や混相流など複雑系流れモデリング, 構造や音響場などとの連成シミュレーション, 1億点規模の実機形状シミュレーションなどの 機能を実現した. 将来期待されるデジタルエンジニアリングへの 適用を目指して,様々な実用問題における 実証を進めている.
 なお,本研究は 文科省次世代IT基盤構築のための 研究開発プログラム 「戦略的革新シミュレーションソフトウェアの開発」 の一環として行われ,その成果ソフトウェア が公開されている.


主な研究テーマ

 本研究室では燃焼グループ空力グループ燃料電池グループ高速流体・高温気体力学グループの4つのグループに分かれ,各分野の研究に取り組んでいる. 2012年度の各グループの研究テーマは次の通りである.

燃焼グループ
 燃焼グループでは主に乱流燃焼場を対象とし,様々な実用燃焼器内の数値解析を行っている. また,乱流燃焼場の解析に欠かせない各火炎モデルの構築を進めている.
  • ガスタービン燃焼器のNO予測
  • 新しい乱流燃焼の数値モデル開発
  • ロケット燃焼器内の数値解析
  • LBMによる液滴分裂の解析
空力グループ
 空力グループは対象物の動作を再現する非定常解析などに取り組んでいる.
  • 自動車空力の非定常解析技術の開発
  • スキージャンパー周りの数値解析
  • 球周りの空力非定常解析
燃料電池グループ
 燃料電池グループでは近年注目される燃料電池の開発への適用を目指した数値解析技術の研究を行っている.
  • 多孔質内の物質移動モデルの構築
  • 非線形音響場に関する理論的研究
高速流体・高温気体力学グループ
 高速流体グループでは、惑星大気再突入時に飛翔体周りに現れる様々な問題や、耐熱材料に関連する研究に取り組んでいる.
  • 柔軟構造飛翔体の空力・空力加熱解析
  • 再突入体周りの電磁波解析
  • 高エンタルピ風洞などのプラズマ気流診断


研究設備

 本研究室では数値解析に各機関のスーパーコンピュータを利用させていただいている.
  • 北大スーパーコンピュータ(SR16000)
  • 東大スーパーコンピュータ(SR16000,FX10)
  • 北大クラウドシステム
  • クラスター並列計算サーバー BladeDome (Opteron 16CPU)
また,大規模計算のために専用の可視化マシンを備えている.数値解析に必須となる格子生成ソフトGridgen,Pointwise,可視化ソフトFieldViewなども完備している.
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