運営

ご挨拶

運営委員 柴山 環樹
工学研究院 附属エネルギー・マテリアル
融合領域研究センター 教授

全学共同研究・教育施設として、北海道大学超高圧電子顕微鏡研究室には2台の超高圧電子顕微鏡ならびに各種の顕微鏡を常設し、材料の表面と内部構造のナノ解析による研究サポートが行えるように体制を整えております。1998年に導入した、世界でも比類のないイオン加速器2基を敷設したマルチビーム超高圧電子顕微鏡(ARM-1300)に加え、2007年にはパルスレーザー発振器を追設したレーザー超高圧電子顕微鏡(Laser-HVEM)の開発を行い、それぞれイオン、電子、光(電磁波)の各種量子ビームのマルチ化の観点から極めてユニークな先端研究展開が期待されます。
これらの装置を利用して、現在は、「北海道イノベーション創出ナノ加工・計測支援ネットワーク」事業、並びに、「大学間連携共同利用設備群 超高圧電子顕微鏡連携ステーション第II 期」事業による共同利用装置として、グリーン・ナノ・ライフ科学に関わる年間100件以上の環境、エネルギー、生命科学の研究者の方々への研究サポートを行っております。
本施設がその使命を果たし、共有設備として今後さらに発展するには、各方面からのご協力が必要です。世界に誇るこれらの設備と研究支援体制を十分にご活用頂きますとともに、今後とも御指導、御鞭撻のほどお願い申し上げます。

歴史

大学における透過電子顕微鏡による研究は昭和17年に始まる。1948年に工学部に加速電圧5万ボルト、分解能3nmの日立製作所製のHU4型が設置され、電子顕微鏡を学内共同利用実験施設として、全学的組織で運用することを目的に、工学部に電子顕微鏡管理委員会が結成された。以来、電子顕微鏡の性能向上と高電圧化に伴い、100kV、200kVの電子顕微鏡が更新設置された。現在まで数十台の汎用電子顕微鏡が各学部、研究所等に設置され、材料科学、医学・生物の分野で多大の成果を挙げてきた。
1965年代から急速に超高圧電子顕微鏡に対する関心が世界的に高まるなかで、本学工学部に、1971年3月、650kVの超高圧電子顕微鏡の設置が認められ、超高圧電子顕微鏡による医学・生物および物質・材料に関する物性研究が本格的に開始された。特に本学の超高圧電子顕微鏡はエネルギー材料である原子炉材料の中性子照射に代わり電子線によるシミュレーション照射研究を全国に先駆けて開始した。
その後、電子顕微鏡の性能向上と照射損傷に関する研究を中心に行う目的から、1981年3月に新たに、1300kVの超高圧電子顕微鏡が完成した。この電子顕微鏡は300kVのイオン加速器を連結した日本で唯一のデュアルビーム型超高圧電子顕微鏡システムとして、原子炉をはじめ高速炉、核融合炉材料のシミュレーション照射研究に使用されている。さらに、従来のエネルギー材料研究に加えて、社会的ニーズから、物質の原子・分子レベルでの解析と未知機能の材料創製プロセスとして電子顕微鏡活用し、基礎・萌芽研究を目的とした、COE形成のための研究環境高度化支援プログラムの一環として、1995年度から3年間の歳月を経て、1998年3月に、2台の高エネルギーイオン加速器と1300kVの超高分解能超高圧電子顕微鏡(日本電子株式会社製 JEM-ARM1300)を連結した、世界で初めてのマルチビーム型超高圧電子顕微鏡システムが、1997年度に竣工した新世代先端材料研究実験棟に設置された。