北海道大学・大学院工学研究院 応用化学部門・生物工学分野

細胞培養工学研究室 (旧)生物資源化学分野 動物細胞培養工学/再生医工学 高木睦 研究室

研究内容概略

動物細胞培養工学

動物細胞は微生物と異なり、接着依存性である、増殖が遅い、専断力に弱い、栄養要求が複雑である、などの特徴を有しています。そこで動物細胞の大量培養実現のために、我々はマイクロキャリアー培養法、特殊な溶存酸素供給技術、酸素消費速度のオンライン測定技術、低血清培地、浸透圧や静圧によるタンパク質生産の制御、アポトーシスの動的制御などの研究をしてきました。

動物細胞培養工学

ハイブリッド型人工肺構築

通常使用されている人工肺はポリプロピレン中空糸膜を介して血液と酸素ガスとの間でガス交換を行いますが、人工材料であるため炎症反応が問題となっています。これに対して中空糸膜表面に内皮細胞を接着した抗炎症性にすぐれたハイブリッド型人工肺を我々は提案しています。このなかでポリプロピレン中空糸膜に種々の修飾を行い強固な細胞接着を達成してきました。

ハイブリッド型人工肺構築

合成糖脂質リガンドの提示

可溶性因子(サイトカイン、増殖因子)、細胞外マトリクスおよび膜結合型サイトカインなど細胞活性化リガンドを細胞に簡便に提示することを目的として、糖鎖やペプチドあるいは蛋白質などを人工脂質に結合して疎水性表面にコーティングしました。これまでガラクトースや硫酸糖の提示によりそれぞれ肝実質細胞の活性化効果、造血前駆細胞の増幅効果を実証しました。

合成糖脂質リガンドの提示

3次元共培養による造血前駆細胞体外増幅

臍帯血造血前駆細胞の体外増幅は骨髄移植医療に効果的ですが、我々は多孔性担体に接着したストローマ細胞と造血細胞との三次元共培養により高価なサイトカインを添加しないでも増幅できることを示しました。ストローマ細胞の三次元培養に適した多孔性担体の選択および硫酸糖などによる修飾が効果的でした。ディッシュ底面での通常の二次元共培養に比べて三次元共培養ではマトリックスなど不溶性の細胞外環境が優れていると考えられました。
3次元共培養による造血前駆細胞体外増幅

骨髄間葉系幹細胞からの軟骨再生

Ⅱ型コラーゲンとアグリカンを主成分とする軟骨組織の骨髄間葉系幹細胞(MSC)を利用した再生治療を目的とし、密度勾配遠心分離を行わない骨髄液からのMSC簡便分離法、ウシ胎児血清の代わりに患者自己血清と増殖因子を用いるMSCの安全な増幅法などを確立しました。さらに、MSCの軟骨細胞への分化効率の改善を定量的RT-PCR手法を用いて開発し、得られた軟骨細胞の軟骨組織への三次元培養法も提案してきました。

骨髄間葉系幹細胞からの軟骨再生<

細胞分化状態の非侵襲的計測法の開発

再生医療において自家細胞を培養して移植用細胞・組織を作成しますが、製品である細胞・組織の品質(特に細胞分化状態)を非侵襲的に計測する必要があります。我々は、間葉系幹細胞から軟骨細胞への分化の度合いを、顕微鏡画像から得られる細胞形態情報をもとにして推定する方法を開発しました。また、通常の顕微鏡では得られない細胞の立体像を位相シフトレーザー顕微鏡により定量的に計測できる方法も開発しました。

細胞分化状態の非侵襲的計測法の開発