2024年度 卒論テーマ

オゾンでもOHラジカルでも分解できない有機フッ素化合物を分解除去する: 促進”還元”処理の適用

防水透湿性素材ゴアテックスやテフロンのフライパンなど、身の回りの様々な物に含まれる有機フッ素化合物は、環境中に残留しやすい毒性物質です。最近、日本の水道原水などにも高濃度で含まれていることが分かり新聞を賑わしましたが、あろうことか通常の浄水処理では処理が極めて難しい厄介な物質であることも分かってきました。この研究では、通常の紫外線より波長の短い真空紫外線ベースの促進酸化/還元法を駆使して、有機フッ素化合物を除去可能な浄水処理法の確立を目指します。
担当: 阿久戸, 七澤

農薬に関する水道水質基準(水質管理目標設定項目)は妥当?: 毒性学的(ChE活性阻害性)観点からの評価

浄水処理工程における塩素処理などで農薬は分解され様々な分解物が生成されますが、これらの分解物は本当に安全なのでしょうか? この研究では、本研究室で開発した毒性試験法(コリンエステラーゼ活性阻害性試験)を駆使し、室内実験により塩素処理工程で農薬の毒性がどう変化するのかを調べ、毒性が増加した場合にはその増加に寄与する分解物を特定し、これらの毒性物質を水道水質基準に組み込むよう提言します。
担当: 平田, 小崎, 郷

官能試験と物質構造のハイブリッド分析 "GC/olfactometry" を用いた浄水カルキ臭の全体像の解明

アンケート調査では常に「水道水をそのまま飲まない理由」の上位に位置する「水道水のカルキ臭」ですが、「標準品が入手できない」物質を含む「混合物」であるが故に、これまでその正体がほとんど分かっていません。この研究では、浄水カルキ臭の全体像を、ヒト嗅覚を検出器としたGC/MSシステム "GC/olfactometry" により解明し、カルキ臭原因物質を水道水質基準に組み込むとともに、「塩素処理しているのにカルキ臭がしない水道水」の供給を目指します。
担当: 林, 山下

ウイルスの水道水質基準をつくるプロジェクト: 塩素処理で病原ウイルスはどの程度処理できているのか?

日本においては、管理された水道水の直接飲用によるウイルス感染事例はこれまでにありません。しかしながら、この事実のみで日本の水道はウイルスに対して安全と言えるのでしょうか? この研究では、実際の浄水場において実施される塩素処理により、病原ウイルスがどの程度処理できているのかを実験的に明らかにし、ウイルスの基準制定など、ウイルスに関する水道水質管理の枠組みの構築に向けた知見を得ることを目指します。
担当: 福士, 中川

病原ウイルスを高度・高効率に除去可能な新規アルミニウム系凝集剤の開発

凝集沈澱砂ろ過/凝集膜ろ過-塩素消毒から成る現行の浄水処理工程においては、前段の凝集ろ過によるウイルス除去は限定的であり、ウイルス低減の大部分を後段の塩素処理に依存していることが分かってきました。その一方で、塩素処理に対する耐性の高いウイルスの存在も明らかになってきています。この研究では、凝集沈澱砂ろ過や凝集膜ろ過におけるウイルスの除去性を向上させるべく、病原ウイルスを高度・高効率に除去可能な新たな水処理用凝集剤の開発を目指します。
担当: 浅川, 大久保

ウイルス粒子の状態変化は浄水処理におけるウイルスの除去性にどの程度影響するのか?

環境水中に放出された病原ウイルスは、多様な環境ストレスに曝されることから、感染力のある完全体粒子の状態から遺伝子断片のみの状態まで、様々な状態で存在しています。この研究では、ウイルス粒子の状態の差異が凝集やろ過におけるウイルスの除去性にどの程度影響するのかを、浄水場におけるフィールド調査と室内実験により明らかにします。
担当: 福井, 末永
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