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Quantum Science & Radiation Engineering

研究テーマReseArch

当研究室は、光や放射線などの量子ビームを利用した化学効果の解明と、その高度利用を目的とする研究や、土壌中に存在する微量放射性核種の検出・定量を通して、地球環境の解明や改善に寄与することを目指して研究に取り組んでいます。以下に研究例を紹介します。

1. 電子線・レーザー逐次多重照射による短寿命化学種の光化学反応の研究
高エネルギー放射線が物質に照射された場合、その物質はエネルギーを得て電離や励起を起こす。このような現象を「放射線化学反応」と呼び、工業、農業、医療など様々な分野で利用されている。放射線化学反応では、最終生成物へと至るまでにイオン、ラジカルなどの様々な反応中間体を生成することが知られており、それらを含めた反応機構に関する研究が行われてきた。しかし反応中間体の寿命は極めて短いため、直接観測は困難である。そこで、パルス状の放射線を試料に照射し、短寿命化学種の生成過程を時間経過と共に追跡する「パルスラジオリシス法」が用いられる。この手法により、放射線が引き起こす超高速物理化学現象を、光の放出や吸収という形で観測することが可能となる。当研究室では、このパルスラジオリシス法とレーザー照射を組み合わせた電子線・レーザー逐次多重照射法(下図)を用いて、短寿命化学種の励起状態における反応ダイナミクスの解明や新規反応の発見を目的としている。



電子線・レーザー逐次多重照射法

2. 土壌に含まれる環境放射性核種の分布

文明の発達とともに環境も変化している。当研究室では特に土壌環境に焦点を当て、土壌に含まれる種々の環境放射性核種のうち起源や化学的特性の異なる核種 (40K, 137Cs, 210Pb, 226Ra)を自然のラジオトレーサーとして利用することにより地表面下の環境変化を明らかにしようと試みている。具体的には、岩石起源で長半減期の40Kおよび226Ra (210Pb一部) から土壌の不均質性を探り、化石燃料の燃焼や過去の原子力施設事故等による人為起源の137Csおよび210Pbから土壌のみかけの堆積速度および生物等による土壌の撹乱の様子を探る。ウラン系列に属する210Pbは天然起源であると同時にフォールアウト核種であるため、特に興味深い研究対象である。地質的背景の異なる地域においてPb同位体比の異なることはこれまで知られている。土壌中のPb含量および210Pb放射能濃度の深度分布から同位体比の地域特性およびその原因を明らかにしようと試みている。
また、ウラン(238U)系列核種の中で唯一の放射性気体であるラドン(222Rn) を北大構内の半原生林においてモニタリングしている。ラドンは下層大気の動きを知るために有用なトレーサーであるが、その一方で特に欧米においては人への健康被害が懸念されている天然放射性核種である。土壌空気のラドンを長期にわたってモニタリングすることにより、地表面への逸出量およびその変動におよぼすファクターの解明を目指す。その際、ラドンのキャリアとなりうる土壌空気の少量成分である二酸化炭素およびその炭素同位体(12C,13C,14C) 比を加速器質量分析法 (AMS)により測定している。

  スロベニア原生林          土壌中の226Raおよび210Pbの深度分布


3. 量子ビームを用いた次世代半導体加工用材料の研究
これまで日本(世界)の半導体産業を支えてきた微細加工技術(リソグラフィ)は、主に露光源の短波長化(高エネルギー化)と微細加工材料であるレジスト材料への露光方法・プロセスの改良によって微細化を達成してきたが、16 nm以下の半導体加工プロセスで用いられる次世代リソグラフィである極端紫外光(EUV)で、光源のエネルギーが材料のイオン化エネルギーを超えることになる。従って、電子線などのイオン化を起こす量子ビームへのレジスト材料の応答性が重要な課題となっている。これを、直線加速器(ライナック)や理化学研究所・播磨研究所(Spring-8)にある世界最先端の高エネルギー自由電子レーザー等の大型照射装置から小型の電子線やEUV露光装置の照射まで、様々な量子ビームを利用して明らかにしていく。



半導体加工用材料研究の概略

量子放射線科学研究室

〒060-8628
北海道札幌市北区北13条西8丁目

北海道大学大学院工学研究院
量子理工学部門 
応用量子ビーム工学分野


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