研究室紹介
研究内容
研究の現況と成果
(1) 量子ビーム利用による材料その場観察研究
イオン加速器付きのマルチビーム超高圧電子顕微鏡にレーザー光照射系を導入し、試料物質に対して電子、イオン、レーザー光の量子ビームを逐次的または同時に照射できるシステムを構築した。これを用いて、イオン液体中のZnOナノ結晶の電子線・レーザー同時照射による光腐食をTEM内でその場観察することに成功した。これを基盤として、水との反応をその場観察するための手法について検討を行っている。また、ガス冷却炉炉心の耐熱性物質として期待されるSiC/SiC複合材について、TEM内in-situクラック伝播試験用ホルダーの開発を行うとともに、実際にTEM内でクラックを与えて、動的なその場観察から伝播経路の解明を行っている(図1)。
(2) 過酷環境用先進材料の開発
過酷環境での使用が検討されているSiCに対して単結晶基板へのHeイオン照射を行い、照射領域と非照射領域界面に生じる残留弾性歪について、先端電子顕微鏡法を駆使した評価方法を確立した。また、プリント基板などの電子部品に使用される銅にHeイオンを照射することで水中での酸化物結晶の成長が抑制される現象を見出した。He格子間原子や照射欠陥が酸素の拡散バリア層となるとともに、Heイオン照射中に表面に形成する炭素主体の被膜により酸化が抑制されることが明らかとなった。
(3) 水素化物を用いた固体電解質材料の開発
固体電解質の候補材料として、水素化物系材料の開発を行っている。リチウムボロハイドライド(LiBH4)に対して、酸化物セラミックスの絶縁体を分散させることでリチウムイオン伝導度を向上することができ、そのイオン伝導度は酸化物ホストの比表面積や細孔体積と強い相関があることを見出した。また、電子線に敏感なLiBH4を含む複合物質に対して、エネルギーフィルターTEMの手法を用いてリチウムをナノスケールで可視化することができた(図2)。未来志向型の電池材料開発に向けて、資源性に富む元素を用いた固体電解質材料の開発にも着手している。
(4) 水素貯蔵材料の開発と表面改質
錯体水素化物やチタン鉄系水素吸蔵合金を対象として、新材料の開発、TEMによる微細構造解析やパルスレーザー照射による表面改質を行っている。水素吸蔵金属である純チタンに有機溶媒中でナノ秒パルスレーザーを照射することで、酸化チタン膜やTi,C,Oを含む被膜の形成により水素吸蔵温度が高温側にシフトすることが分かり、パルスレーザーを用いた水素バリアコーティングの基礎的知見を得ることができた。パルスレーザーを用いた合金の活性化手法についても検討している。

