北海道大学大学院 工学研究院 環境創生工学部門

水環境保全工学研究室

1.簡易大腸菌測定技術

 水中に大腸菌が検出された場合、その水は糞便で汚染されていることになります。糞便中には病原菌が存在する可能性が高いので、測定が難しい病原菌の代わりに大腸菌を測定することで水の衛生学的安全性を判断しています。このような細菌を「指標細菌」と呼びます。

 現在、大腸菌数はシャーレで培養することで測定されていますが、測定に24時間程度かかることが問題です。本研究室ではわずか2時間で大腸菌数を測定できる技術を開発しました。この技術では大腸菌数が10~10,000個/mLの範囲であれば希釈しなくても測定できる、測定に使用する試薬が0.02 mLでよい、一度に96サンプルも測定できる、1サンプルあたりの測定コストは約2円であるなど、従来の方法に比べて様々なメリットがあることがわかっています。

 今後はこの技術を用いて飲料水などの低濃度(1個/L)の大腸菌サンプルを測定する、大河川を縦断してサンプリングし大腸菌を一斉分析する、途上国の飲料水汚染を早期に発見するなどの研究を行なっていきます。

 大腸菌数測定キット(セルスぺクト株式会社)

 関連資料(北大プレスリリース)

2020.8.27 本研究室で開発された技術が商品になりました。

 

2020.2.13 プレスリリースしました。
その結果、色々なメディアでご紹介いただきました。
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2.金ナノ粒子を用いた細菌の16S rRNAの比色分析

 水は人間の生命維持に必須の資源であり、人間は食料生産や経済活動を維持するために生活用水、農業用水、工業用水としても水を利用しています。しかしながら「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標6「安全な水とトイレを世界中に」が示しているように、現在のところ多くの国々で安全な飲料水を利用することができていません。

 現在、飲料水の微生物学的安全性は病原性細菌数の測定によって保証されています。しかし、この測定は培養や16S rRNA遺伝子の分析に基づいて行われており、莫大な労力、時間、コストを必要とします。そこで本研究室では、凝集状態によって溶液の色(すなわち吸光スペクトル)が変化する性質を持つAuNPsを用いて、短時間かつ低コストで細菌の16S rRNA遺伝子を測定する手法の開発を行っています。また、インフルエンザ診断キットなどに利用されているイムノクロマト法の機構を利用して、細菌の16S rRNA遺伝子を検出する紙チップの開発も行っています。

3.水環境への病原菌負荷量の網羅的調査

 生活排水や工場排水は処理された後に水環境へ放流されますが、病原菌は完全に除去されているわけではありません。本研究では、北海道内の大河川の源流域から河口まで広範囲にわたり河川水をサンプリングし、培養に基づく方法や遺伝子を解析する方法で病原菌や薬剤耐性菌を網羅的に分析し、人間活動が水環境に与える微生物学的な環境負荷を明らかにします。蓄積されたビッグデータは、水道水源や農業用水の適切な管理、水域のレクリエーション機能の活用に利用可能です。