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工学研究院若手教員奨励
賞受賞者を紹介します

北海道大学大学院工学研究院では、優れた研究業績を挙げた若手教員の研究活動奨励を目的として、令和2年度に若手教員奨励賞を設置しました。

令和5年度は、6名の先生方が受賞されましたのでご紹介します。

メカノケミカル合成技術で、
日本から産業革命を起こす

応用化学部門 有機工業化学分野
准教授 久保田 浩司

このたびは若手教員奨励賞を賜り、誠にありがとうございます。現在の有機化学産業は、環境負荷の大きい石油由来の溶媒と、化学反応の促進に莫大なエネルギーを用いており、決して持続可能なものではありません。私は、ボールミルなどの粉砕機を用いた「メカノケミカル有機合成技術」を駆使し、有機溶媒を用いない高効率かつ環境に優しい化学反応の開発を通して、社会のグリーントランスフォーメーションの実現を目指しています。

メカノケミカル法による環境に優しい有機合成反応の開発

マイクロ流体デバイスを用いた
ナノ医薬品製造技術の開発

応用化学部門 分子機能化学分野
准教授 真栄城 正寿

この度は、令和5年度若手教員奨励賞を賜り、大変光栄に思います。近年、半導体の微細加工技術を用いて作製されたマイクロ流体デバイスの実用化が進んでいます。私は、手のひらサイズのマイクロ流体デバイスを用いた生体分子の分析やmRNAワクチンに代表される脂質ナノ粒子の製造法の開発とナノ医薬品製造への応用に取り組んでいます。今回の受賞を励みに、研究成果の社会実装を目指して、研究に邁進したいと思います。

独自に開発したマイクロ流体デバイス(iLiNPデバイス)を用いた脂質ナノ粒子作製法の概念図

優れた照射耐性を有する
次世代原子炉用構造材料の開発

材料科学部門 エネルギー材料分野
准教授 岡 弘

令和5年度「工学研究院若手教員奨励賞」に選出いただき誠にありがとうございます。選考委員の先生方に感謝申し上げるとともに、周囲の先生方、これまで研究に従事してくれた学生、家族の支えに感謝いたします。私はこれまで、核融合炉等の先進原子炉用構造材料における照射損傷機構と、耐照射性を向上させた新材料の開発に取り組んできました。最近では、金属積層造形を利用し内部にナノスケールの酸化物粒子を高密度に分散させた合金の創製に挑戦しています。これからも、日本の未来に不可欠な次世代原子力システムの実現に資する研究に取り組んでいきます。

金属3Dプリンティングによる原子炉材料の創製

Solid solution alloy nanoparticles as
novel catalysts in green energy storage

材料科学部門 マテリアル設計分野
助教 Mai Thanh Nguyen(グエン タン マイ)

I am truly honored to receive the Young Faculty Encouragement Award. I have been engaging in synthesizing solid solution metal (metal oxide) alloy nanoparticles of various metal pairs including those with miscibility gaps and intermetallics in the bulk. Currently, my research involves in studying their stability under various conditions. I would like to pursue research to understand the catalytic activity of these nanomaterials owing to their novel structures. Based on that, the research contributes to developing new catalysts for applications in green energy storage.

The draw illustrates vacuum co-sputter deposition of two metal targets (orange and gray) onto liquid poly(ethylene glycol) for synthesis of solid solution alloy nanoparticles. The method is applicable for various metal pairs, enabling to achieve solid solution alloy nanoparticles of metals that are even immiscible or forming intermetallic compounds in the bulk. These nanoparticles with new structures can be of great interest for catalysts.

二酸化炭素を原料とした有用物質合成を
可能とする固体触媒の創製

応用化学部門 化学工学分野
准教授 多田 昌平

このたびは若手教員奨励賞を頂戴し、誠にありがとうございます。私の研究では、二酸化炭素排出抑制や炭素資源の循環利用に向けて、二酸化炭素から燃料や化成品原料を合成する触媒プロセスを開発しています。安定な二酸化炭素を分解する「力強さ」と、不安定な化学物質を精度よく合成する「繊細さ」を兼ね備えた触媒の登場が急務です。皆様の変わらぬ支えに感謝し、これからも研究を続けてまいります。

(左)企業と共同開発した反応装置(右)二酸化炭素を原料とした反応で得られる液体生成物

シアニドの反応性コントロール:
触媒的イソシアノ化反応の開発

応用化学部門 有機工業化学分野
助教 百合野 大雅

この度は、若手教員奨励賞にご選出いただき、誠にありがとうございます。私は、最小の分子状アニオンであるシアニドの反応性を巧みに制御し有効活用する、新たな技術の開発に取り組んでいます。我々の見出した触媒的イソシアノ化反応は、従来の教科書とは全く逆の反応です。有機合成化学は、分子を組み立て式おもちゃのように自在に作り上げる学問です。これからも、世界中をあっと驚かせるような合成反応を開拓していく所存です。

シアニドの反応性コントロール