工学研究院長・工学院長・工学部長
MESSAGE

No.418 2019年04月号

シアワセ
カタチにする
エンジニア

フィールドを活かした工学教育

北海道大学工学部は1924年に、農学部、医学部に次ぐ本学3番目の学部として創設され、今年で95年を迎えます。本学の建学の精神に基づき、「人類の生活をより快適に、より豊かにすることを使命として取り組まれるべき学問としての工学を通じて社会に貢献すること」を基本理念としています。工学部は、応用理工系学科、情報エレクトロニクス学科、機械知能工学科、環境社会工学科の4学科15コースで、大学院となる工学院は13専攻、総合化学院は1専攻3コース、情報科学院は1専攻5コースと、多彩な専門領域で構成されています。いずれも実学を重視し、北海道をはじめとするフィールドを活かした教育や研究が特徴で、世界的に活躍できるエンジニアを育成しています。

カタチにする工学

工学とは、優れた理論や技術を開発し、それらを実現させる(カタチにする)学問です。そのためには自分の専門領域に留まらず、様々な知識を追求し、多くの学問領域を修得する必要があります。

私自身は建築学が専門ですが、プロジェクトを実現させるために様々な異なる学問領域に触れました。北海道内で吹雪の影響を少なくする施設を計画したときには、流体力学や気象学の専門家に教わりましたし、子どものためのコミュニティセンターを設計したときには、心理学や社会科学、公共政策学などをかじりました。新たな技術を開発し実現するには、異分野の専門家と交流し触発し合うことが必要で、自分の視野を大きく広げてくれます。工学の一番の面白さは、理論や技術をカタチにする過程での様々な人との出会いがあり、常に新しい発見があることです。

人のシアワセをカタチにする

新たな理論や技術をカタチにする工学の究極の目的は、人々の幸せを創り出すことです。新しい製品を開発したり、新しい施設を建設したりして、それを使う人々の笑顔を見るときほど自分の職業が楽しいと思えることは無いでしょう。

札幌農学校の第二代教頭を務められたウィリアム・ホィーラー先生は、“To live in truth toward all mankind with helping hand, kind heart , just mind”「全ての人々に分け隔てなく支援の手、親切な心、正しい精神をもって接し『真理』に生きる。」 と言われています。先生は、才能あふれる土木・建築技術者でもあり、札幌時計台や北大のモデルバーンを設計されています。先生が何よりも伝えたかったことは、工学技術者として人の幸せのために最先端の技術を活用することでした。

北海道大学工学部には、このような素晴らしい精神が脈々と息づいています。みなさんがこの工学部で生涯の師と友人に出会い、多くの有益な学問を修得し、人々のシアワセをカタチにして社会に貢献するエンジニアになることを、切に願っています。
出典:高崎哲郎「お雇いアメリカ人青年教師、ウィリアム・ホィーラー」(鹿島出版会)

工学研究院長・工学院長・工学部長
瀬戸口 剛(せとぐち つよし)
1962年生まれ。1991年早稲田大学大学院後期博士課程修了。91年北海道大学工学部助手、95年同助教授、2010年より北海道大学大学院工学研究院教授。17年工学研究院副研究院長を経て、19年4月より工学研究院長・工学院長・工学部長。