研究紹介

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無機材料化学講座
無機合成化学研究室

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トンネルや坑道に代表される岩盤構造物は、交通や資源開発において欠かすことのできないものであり、実生活にも大きく関わるものです。しかしながら現実には岩盤の破壊による事故が様々な規模で発生しており、場合によっては甚大な被害へとつながることもあります。そのため破壊問題は、極めて重要な研究課題であると考えられます。

岩盤等の破壊は、主に亀裂(crack)や空隙などの欠陥組織が発生し、それらが伸張、合体することによって起こります。したがって破壊現象を研究課題として取り扱うには、亀裂の様々な性質を解明することが必要となります。


図1 欠陥組織発生の様子

蛍光法による亀裂経路の可視化

本研究室では、引張応力場で生じる岩石内の緩やかな亀裂進展現象について様々な視点から取り組んでいます。このような現象は、亀裂先端の応力レベルが臨界値に達しないような比較的小さい応力値で発生します。

低応力の条件下での亀裂が進展する要因は、引張応力の助けを借りることにより外部の環境との化学反応が発生し、亀裂の先端部分の化学結合の劣化・分断現象(応力腐食)が起こるためであるというのが主に考えられています。

そして低応力場での亀裂の進展は、比較的緩やかなスピードで進行します。このような破壊現象は、岩盤構造物の長期安定性の実現に大きく関わっています。


図2 亀裂先端部分化学結合の様子

本研究室では、以上に述べた緩やかな亀裂進展現象を実験的に評価しています。実験方法としてDouble-Torsion試験法を用いています。この試験により、引張応力場における亀裂先端の応力レベル(応力拡大係数)と亀裂進展速度を実験的に測定し、これら相互の関係を考察しています。

実験に使用する岩石には、稲田花崗岩・大島花崗岩・Westerly花崗岩・熊本安山岩を用いています。さらに岩石材料の力学的異方性が、亀裂進展挙動にどのくらい影響を及ぼすかについて調査しています。

また、応力腐食による亀裂進展経路を偏光顕微鏡及び電子顕微鏡を用いて観察し、Double-Torsion試験の測定結果との関連性についても調査しています。