研究紹介

バナジウム合金の重水素リテンション特性

プラズマ理工学講座
プラズマ物理工学研究室

核融合炉のプラズマ壁相互作用

未来のエネルギー源として、核融合反応を利用した発電(核融合炉)が期待されています。核融合炉の実現は30年先といわれていますが、既に超高温プラズマをつくるのに必要なエネルギー以上の核融合エネルギーが得られています。

プラズマと壁との相互作用(プラズマ壁相互作用)は核融合プラズマの閉じ込めに強く影響を与えます。プラズマが壁に当たると、壁の原子がプラズマ中に不純物となって入ります。このため、プラズマのエネルギーが光の形ですぐに壁に損失します。一方、壁には水素燃料(重水素など)が吸蔵されていきます。壁に吸蔵された水素燃料が再びプラズマ中に入ると、高性能の超高温プラズマを維持できなくなります。研究室では核融合炉の実現に向けて、こういったプラズマ壁相互作用についての様々な研究を行っています。

図1 プラズマ壁相互作用
図1 プラズマ壁相互作用

バナジウム合金の重水素リテンション特性

研究室で行っている研究の例として、バナジウム合金の重水素保持(リテンション)特性が挙げられます。核融合炉の壁には、反応の結果つくられる中性子が打ち込まれて、壁材料が放射化します。そのため、壁には誘導放射能がすぐに減衰する材料、すなわち低放射化材料が使用されます。バナジウム合金はその一つです。この合金が壁材料として使われた場合、重水素リテンションがどのようになるか調べる必要があります。

このバナジウム合金に、照射温度など種々の条件を変化させながら重水素イオンを照射します。その後、昇温脱離分析法によりその重水素リテンション特性や熱脱離特性を評価しています。また、オージェ電子分光法や電子顕微鏡、原子間力顕微鏡によってイオン照射前後のバナジウム合金の表面状態を調べ、重水素リテンション特性との関連性について研究しています。

図2 バナジウム合金の重水素リテンション量
図2 バナジウム合金の重水素リテンション量

研究室ではプラズマ壁相互作用の他にもプラズマを応用した技術開発、たとえばLSIやバイオチップ技術開発を目的とした、プラズマプロセスによる表面改質についても研究しています。