研究紹介

道路施設(舗装)のライフサイクルコスト (LCC)最小化

寒冷地建設工学講座
社会基盤計画学研究室

道路構造物は,交通機能,物流機能等,都市機能を確保する上で大きな役割を担っており,そのサービスレベルを適切に管理する必要があります.その中でも道路舗装は,他の構造物と比較して劣化が早く進むため,きめの細かい維持管理計画/補修計画が必要となります.こうした補修計画を評価する上で重要となるがライフサイクルコスト (LCC) という概念です.LCCとは,長期的な経済性を検討するためのコストであり,一般的に建設費,維持費,廃棄費および道路利用者コストの和として捉えられ,建設から廃棄までのライフサイクル(道路舗装の場合,約40年)に発生する全てのコストを意味します.

たとえば,図1に示す舗装の維持補修計画を考えてください.図の横軸は時間を表し,縦軸は舗装の水準となる道路性能です.道路性能は時間とともに劣化しますが,赤,緑,黄色の曲線はそれぞれ,要求性能3(低性能),要求性能2(適切な性能),要求性能3(高性能)に道路性能が達した場合に補修を行うことを示しています.一見,要求性能3に達してから補修を行うことが補修費用を節約できるように感じられますが,道路利用者の走行コスト(ユーザコスト)も考えた場合,それは最適とはなりません.このことは,道路性能が低いレベルで放置された場合,道路利用者の走行コストが高くなってしまうことからも想像できます.

図2は,補修計画とLCCの関係を示しています.この図から,最適な補修計画は要求性能2まで劣化が進んだときに補修を行うことになります.このように,どの時点でどのような規模の補修を行うかについて,約40年またはそれ以上の長い期間に発生するLCCを考え,これを最小化するための技術開発および実道路ネットワークへの適用を目標として研究を重ねています.