表2. 技術者全般に共通する知識・能力の具体的内容

 

知識・能力項目

(a)多面的思考能力等

 地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養として、物質中心の社会から精神価値を重視した社会への変換や持続可能な社会の構築を担い、国際的にも活躍できる自立した人材に必要な教養と思考力を意味するものです。具体的には、@種々の歴史、文化、習慣、価値観、風土、経済などに関する知識とこれらにより幸福・福祉や豊かさなどの概念が多岐にわたることの認識、A自分自身の幸福や人生の目的、自分の特徴などについて考える自己把握力、B自分自身や自国など自分たちの価値観や利益だけではなく、他者・他国の立場からも物事を考えることができる能力、等が求められます。

(b)社会責任理解力等

 技術が社会や自然に及ぼす影響や効果、および技術者が社会に対して負っている責任に関する理解力として、技術者倫理、すなわち、技術と自然や社会などとの係わり合いと技術者の社会的な責任への理解力を意味します。自立した技術者として必要な責任ある判断と行動の準備を学生時代にしておくことが求められます。したがって、倫理学の紙上の理解ではなく、多くの機会を捉えて学生諸君が自ら考えることによって得られる実際的な理解が求められます。具体的には、専門教育を通して培われる各分野の技術者それぞれの社会的役割や社会的責任とそれを支える責任ある判断と行動、それぞれの分野の技術の社会性・公共性に関する具体的認識や文化との関わりの理解、技術の最終的な受け手である多様な人々への思いやりとそれらを踏まえた責任自覚力が求められます。

(c)工学基礎能力

 数学、物理学、化学、生物学、地学などの自然科学や情報技術について、その知識にとどまらず実際に応用できる力を意味します。一般に工学基礎科目と呼ばれる科目等でその基礎的力をつけます。

(d)専門技術力

 該当する分野の専門技術に関する知識とそれらを問題解決に応用できる能力を意味します。ここでの具体的な内容は先に示した建築都市学プログラムの具体的な知識・能力として設定されます。

(e)デザイン能力

 種々の科学、技術および情報を利用して社会の要求を解決するためのデザイン能力であり、単なる設計図面制作能力ではなく、想像力、創造力、種々の学問技術を統合して、必ずしも正解のない問題に取り組み、実現可能な解を見つけ出していく能力(課題発見・課題設定能力)を意味します。そして、社会のニーズへの取り組み方、ものごとの体系的理解を踏まえた思考能力、プロトタイプの作成と評価(性能のみならず安全性、経済性、環境負荷を含む)、品質管理なども加わります。

(f)コミュニケーション能力

 日本語による論理的な記述力、口頭発表力、討議等のコミュニケーション能力および国際的に通用するコミュニケーション基礎能力などの広い意味でのコミュニケーション能力を意味します。この中で重視されるのが、国際的に通用するコミュニケーション基礎能力です。これは通常、英語によるコミュニケーション能力を意味しますが、必ずしも英語でなくても良いと考えられています。また、流暢な会話力を要求してはおらず、少なくとも学部教育プログラム修了後ある程度の訓練により、技術的な内容についてのコミュニケーションができればよいとされています。なお、この最低水準は時代で変わり、将来はより高度な水準が要求されると考えられます。この能力には、分野によっても異なりますが、多くの場合、文章作成能力、口頭発表能力、プレゼンテーション能力、討論能力、議論力、他者の考え方の理解能力が付随して求められます。

(g)継続的学習能力

 自発的な学習習慣に裏打ちされた自発的学習能力や自主的な情報獲得能力・情報調査能力と観察力を基とした自主的、継続的に学習できる能力を意味します。グローバル化した変化の早い情報社会では、生涯にわたってこの能力を磨き上げることが必要になります。この基礎段階のものを講義、実験、実習、演習、調査・見学、および卒業研究等を通して身につける必要があります。

(h)まとめ能力

 与えられた制約の下で計画的に仕事を進め、まとめる能力として、自立して仕事を計画的に進め、期限内に終えることができる能力を意味しますが、関連して制約・要求・期限などの与えられた制約条件把握能力も求められます。また、他分野の人との協力を含むチームワーク力・協調力、リーダーシップ力なども含まれます。

 

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