(2)高密度記録を目指す金属窒化物の
創出と複合化


低温窒化法による巨大磁化磁性体Fe16N2の生成と物性

 巨大磁化をもつ可能性が指摘されながら、単一相の合成が困難なために その真偽が確定していなかった窒化鉄Fe16N2バルク体の合成に成功した。 30nmの粒径をもつ酸化鉄微粉末を原料として、水素還元したのちに130℃の低温で 100時間アンモニア窒化し、X線回折ではFe16N2の単一相が得られた。 室温での飽和磁化は225emu/gで窒化前のα-Feの値を16%上回った。 室温のメスバウアスペクトルにはまだ19%の超常磁性成分を含むものの、 磁気分裂した3種類のFeサイトで帰属できる綺麗なスペクトルが得られており、 280 emu/gに及ぶ巨大磁化の存在が実証された。様々なα-Fe微粉体やスパッタ 薄膜を原料とした低温窒化についても検討している。

 2000〜2002年度科学研究費補助金基盤研究(B)(2)12555250
 2002〜2003年度科学研究費補助金萌芽研究14655233
 2005〜2006年度科学研究費補助金萌芽研究17655090
 2001年度北海道科学技術総合振興センター共同研究補助金 など

   Fe16N2の結晶構造       BHループ


高周波スパッタ法によって作製した窒化鉄系薄膜の
ポストアニールによる磁気抵抗膜の形成

 アルミナを絶縁層とした強磁性トンネル接合では、10%以上の磁気抵抗効果が発現するところから、 ハードディスクの読み出しを始めとした磁気センサーへの応用が期待されている。 大きな磁気抵抗効果が室温で現れ、安定に動作する物質系が求められている。 窒化鉄は熱的に準安定であり、300℃以上に加熱すると、室温で強磁性なα-Feが 析出することに着目した。高周波スパッタ法によってAl1-xFexN固溶体薄膜を 形成したのちにアニールする事によって、α-Fe微粒子がAlNマトリックス中に 分散したグラニュラー薄膜を得た。窒化物をマトリックスとした磁気抵抗効果を 発見した。また窒化鉄薄膜そのものを低真空な封管中でアニールして得たγ-Fe2O3 磁性体中に少量のα- Fe2O3非磁性絶縁体が混在した薄膜でも磁気抵抗効果を見出している。 またスピン分極率の大きいSr2FeMoO6やMn-フェライトなどの強磁性体についても、検討している。

   
Fe-AlNグラニュラーのTEM像    Fe-AlNグラニュラーの室温での磁気抵抗曲線


ゲル化窒化法によって合成したクラスタードープ型
金属酸窒化物における機能融合化

 金属硝酸塩混合水溶液にクエン酸をゲル化剤として添加して乾燥後に 仮焼した前躯体をアンモニア窒化すると、線巾の広いGaN様のX線回折図を 示す生成物が得られる。合成条件によって可変な相当量の酸素を含有する ガリウム欠損型酸窒化物が生成した。X線吸収スペクトルからドープする 金属の種類によって、@GaN中にドープ金属酸化物クラスターが生成する場合、 AGaサイトをドープ金属が部分置換する場合の二種類が見出された。 これらのドープによって、GaNの光機能に更に新たな機能性として強磁性、 蛍光、センサーなどを付与する新しい構成法が拓けつつある。

 2005〜2006年度科学研究費補助金特定領域研究17042002 など


      GaNとMn2O3の整合図


    Ga(O,N)のGa周りの動径分布         Mn5%ドープGa(O,N)のGa周りの動径分布




高周波加熱法を用いたGaN結晶の昇華析出と
GaNの元素置換による機能融合化

 GaN接合を形成する基板材料として、GaN単結晶の育成が求められている。 高圧法やナトリウムフラックス法が知られているが、結晶の大型化は困難で 新たな育成法が求められている。グローブボックス中にてGaN粉末を高周波加熱したところ、 850℃以上では分解してGa金属と活性窒素が生成し、一部分が再結合してGaN結晶となることを見出した。 これをもとに新たな育成法を検討している。




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