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  近年(ここ3年間ほど)当研究室で行われている研究の概要です。


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  研究活動 (2014.2更新)


  当研究室では、地盤工学のさまざまな問題に対して、先端の実験施設を利用して研究を行っています。近年扱ってきた問題としては、道路盛土・河川堤防の建設 や埋立・自然斜面・海底資源(メタンハイドレート)採取に関連して問題となる安定性・変形の評価などがあります。地盤工学が洗練されるにつれ、検討課題は 多岐に渡るようになりました。このような現代の地盤工学において、私たちは問題の全体を見据えながら、土そのものが有する複雑な特性への理解をさらに進 め、その意義を問題の把握・解決に資するよう還元することを目指して研究を行っています。ゆえに「地盤物性学」研究室という名を冠しています。ここで は、近年行った研究の中から、いくらかを紹介していきます。


自然細粒土の物性
自然中の土のあらゆる状態での挙動把握を目指して
 世界にはさまざまな地質が存在し、細粒土(つまり粘土やシルトを主成分とする土)だけに限っても、様々な特徴を有するものがあります。個々の土の特性・ 挙動は複雑であり、その地盤中での分布も不均一であるため、実際の建設プロジェクトでは地盤調査が必須です。しかし、ある場所での土がある特徴を有するに は、必ず地質学的な理由があります。空間的ばらつきはありますが、決して完全にランダムではありません。私たちは、土の地質学的背景や鉱物特性などを把握 したうえで、原位置や実験室での精緻な試験を行うことによって、個々の土の特性の由来を追及しています。以下に、具体的な研究例を紹介します。



軟弱粘土から軟岩まで:自然の土を読み解く


微小変形下での挙動
 土には、他の建設材料に比べて、応力とひずみの関係の非線形性が非常に高 いという特性があります。しかし、非常に小さなひずみレベル(0.001%程度)では非常に弾性的にふるまうことが知られています。土の力学的特性の 「マッピング」において、この弾性的挙動を正しく把握することは、すべての始まりと考えることもできます。微小変形時の弾性特性の中でも特に重要と思われ る、以下のトピックについて研究を進めています。

@異方性
 自然土は重力場で堆積するものである以上、鉛直方向と水平方向で特性に大きな違いがあり、これを異方性と呼びます。このことは広く認識されているのです が、定量的な計測が困難であるとともに、その影響が大きい実務問題とそうでない問題の認識が不十分であるため、実際の設計では多くの場合、等方性が仮定さ れます。我々の研究( (1)・(2) )では、多くの自然粘土には異方性に一定のパターンがあり、簡易な調査でも一次推定が可能なことや、なぜ等方性の仮定(たとえばE=3G:Eはヤング率・Gはせん断剛性率)が「たまたま」それほど間違った結果をもたらさないのか、などを示しています。

A有効応力への依存性
 修士課程くらいの地盤工学の学生になると、「土の弾性係数は有効応力のだいたい0.5乗くらいに比例する」と認識している学生もいるでしょう。このよう な大雑把な理解は、それはそれで非常に重要なものです。しかし、多くの自然粘土をもう少し調べていくと、古い年代のものほど有効応力への依存性は小さく なっていくことがわかり、乱すとその違いはほぼなくなることがわかりました
(2)。この効果は、圧密試験などから把握されるエイジング効果よりも年代と密接な関係があるように見えます。

B原位置調査からの弾性係数の推定
 原位置でのコーン貫入試験(CPT)や、それを利用した原位置せん断波速度測定(SCPT)などから、原位置状態での土の弾性係数を推定する手法を検討しています。これまでの結果から、ルーチン試験であるCPTから求められるコーン指数に基づいて、
粘土や泥炭のせん断剛性率Gを推定する方法を提案しています( (3) )。上記@の知見と合わせれば、G以外のさまざまな弾性係数を推定することも可能です。コーン指数を用いたGの推定に基づく地盤変形解析の例なども示しています( (4) )。



海成堆積粘土の典型的な微小ひずみ剛性異方性
(Ch/Cv、Shh/SvhはそれぞれEh'/Ev'、Ghh/Gvhの
等方応力下での値)


剛性の応力依存性と地質年代の影響
(mとnは、それぞれヤング率とせん断剛性率が
応力のm乗・n乗に比例するという指数)



コーン指数と微小ひずみせん断剛性率の相関
(白抜きマーカーは北海道泥炭)



大変形下での挙動
 大変形下では、土のいわゆる「強度」が問題となります。土質力学を学んだ人なら、これはすなわち有効応力強度定数c'・φ'や非排水せん 断強度suの話であるとわかります。我々はこのトピックに関して、これらの強度定数が未知である、我々にとって新しい土の研究を進めるとともに、実はこれ らが「定数」ではないことを認識し、アプローチする問題によって適切な値(あるいは関数)の選定を行えるように検討を行っています。

@未知の土質の強度特性
 JOGMECや清水建設との研究により、メタンハイドレード賦存地域である南海トラフの大水深(1000m超)からの土が、その粒子寸法から推定される 物理・強度特性と大きく異なる特性を有していることがわかりました。その原因は、coccolithと呼ばれる生物残骸が構成物の大きな割合を占めること により、塑性が著しく低いことであることがわかりました( (5) )。

Aさまざまな条件下での、さまざまな構造を持つ土の強度
 強度定数を求める試験である、例えば三軸圧縮試験は、ルーチン化しており、マニュアル通りに行えば土の強度定数を決定することができます。しかし、応力 集中箇所のでの高い有効応力下、あるいは逆に地盤表層での低い有効応力下での一般的な強度特性の重要性は、ルーチン試験には反映されていません。また、微 小変形時の変形性と同様に、大変形下でも土は相当の異方性を示します。中空ねじりせん断装置を利用して主応力をさまざまな方向に設定して載荷試験を行い、 強度異方性を調べる研究は実は50年前から行われています。しかし、自然の土を不攪乱状態で試験し、異方性の由来を地質学・堆積学的に調べたり、地盤調査 結果との整合性を詳細に検討した研究は非常に限られています。
 以上の背景を鑑みて、当研究室ではさまざまな条件下での、さまざまな構造(自然堆積構造・人工締固め構造)を持つ土の強度特性を研究しています。一例として、今年度は海成軟弱粘土の異方性( (6) )や、洪積粘土の低拘束圧下での挙動などを研究しています。



南海トラフにおいて海面下1,000mから採取した土のSEM
(電子走査顕微鏡)写真:多量のcoccolithが特徴


中空試験機を用いて主応力を回転させたせん断試験


人工河川堤防の浸透に対する低拘束圧下での強度から、
波浪場の防波堤重量を支える海底堆積土の繰返し強度まで:
強度問題の体系化を目指して



超大変形下での挙動:流動性の評価
 高含水の土は、もはや固体力学の範疇での挙動解釈は難しく、流動学(レオロジー)という観点から物性値の 測定・モデル化が必要となります。流動性の把握は、土石流の解析や浚渫粘性土の処理(ポンプによる圧送やヤードでの流動)の検討に非常に重要です。流動性 が含水比や擾乱を受けてからの時間(その影響をシキソトロピーと呼びます)などにどのように影響されるかを調べるため、特殊な低容量・高精度ベーンせん断 試験装置・回転粘度計・フォールコーン試験装置・ベンダーエレメントなど、通常の土質試験室にあるものは一味違っツールを用いて研究を行っています。シキ ソトロピーの発展に関する知見や、剛性を指標とするその非破壊試験法の提案などの発表しています( (7)(8) )。


ジャカルタ島の土石流:左上写真は室内ベーンせん断
装置を応用した強度・流動性測定とメカニズム検証



軟弱地盤の沈下予測に向けて:温度・時間の効果
 
変形速度が土の変形抵抗に与える影響、つまり「時間効果」は、実務においてはしばしば二次的なものと考え られ、重要視されるケースは限られています。しかし、埋立地盤が直下の粘土層の圧密によって50〜100年という時間をかけて沈下するケースや、泥炭地盤 中に盛土やパイプラインとその周囲の埋戻し土などの構造物が10年のオーダーで沈下していくケースは、時間効果を考慮しなければ、問題は半分しか解けませ ん( (9)(10) )。そこで、超低速定ひずみ圧密試験や、長期三軸クリープ試験などを通して、時間効果の把握とその合理的な解釈を目指して研究を行っています。また、時間効果と温度は密接な関係があり、温度を変数とした試験も行っています( (11) )。場合によってはこれらに加えて模型実験を行い、二次元沈下のメカニズムを解明するための観察や測定を行っています。



泥炭地盤中の構造物の沈下:模型実験より


異なる自然粘土の圧縮特性における時間効果




人工改良土の物性
微小〜中規模変形下での挙動
 セメントなどの固化材で固化改良された土は、通常非常に高い剛性をしめすため、周囲の未改良土に比べれば、実際に発現するひずみは限られ たものです。それゆえに、小さなひずみに対する剛性を正確に把握することは、設計の高度化に寄与します。例として、当研究室では国土交通省の羽田空港整備 事務所からの受託を受け、軽量混合固化改良土の微小な圧縮挙動の研究などを行ってきました( (12) )。低透水性の硬質土質材料の圧縮性を正確に測定するのは非常に困難です。得られた結果から、羽田空港のD滑走路における改良土の健全性について実証しました。
 しかし、固化改良された土は、必ずしもガチガチに固いものばかりではありません。特に北海道には、有機質土あるいはその下位層として腐植酸を含む土が多 く分布しており、これらの土は、固化しづらいうえに、固化されたとしても比較的低い強度しか得られません。このような土の剛性とその非線形性を合理的かつ 簡易的にあらわすモデルなどを、自分たちの実験結果に基づいて提案しています( (13)(14) )。



軽量混合固化処理土:滑走路では微小な地盤変形も許されない。
精緻な技術と斬新なアイデアで真の剛性を計測する。


一軸圧縮強度のみを指標として、任意の有効応力レベルでの
せん断剛性率を簡易予測するモデル:■の2点が
外れているように、まだまだ改良の余地はありますが・・・



大変形下での挙動:強度の由来
 原位置でセメントなどの固化材と土を撹拌して固化改良する技術は、日本が世界に誇る地盤改良技術の一つです。しかし、室内で原位置と同じように配合した試料を作製しても、原位置と同じ強度とはなりません( (15) )。 これは、当然原位置では元の土の物性にばらつきがあったり、撹拌にムラがあったりすることも理由として考えられます。ここで、少なくとも粘性土に限って は、固化が圧密よりも早く完了するという理由から、セメントと土の混合体が固化に加えて圧密によって固くなるというメカニズムは通常考慮されません。しか し、前述の通り、固化改良土にも(特に浅層混合処理などの場合)比較的強度が低く、通常の粘土と同じフレームワークで応力効果を考慮すべきと思われるもの もあります。そこで当研究室では、固化改良においてセメント水和反応効果の発現と有効応力増加との相互作用を研究しています( (16) )。



養生条件を変えた固化処理度の三軸圧縮挙動:
セメント添加率によって効果が異なる。そもそも管理指標
である一軸圧縮強度quとは何を意味するのか?




地盤改良技術の向上
ドレーンによる改良:土の物性の把握による効果予測
 北 海道には泥炭が広く分布しており、地盤の安定や長期沈下に対して問題となる場合が多くあります。そこで、泥炭地盤の地盤改良工法として、最近はプラスチッ クボードドレーンが頻繁に用いられています。ドレーンの設計には対象とする地盤の圧密係数Cvの正確な把握が重要ですが、排水方向を鉛直とした通常の圧密 試験によって求められているのが現状です。しかし、ドレーンで改良する場合、排水は水平方向に卓越することになります。そこで、泥炭や粘土の透水性の異方 性について研究を進めています( (17) )。



プラスチックドレーンの打設:
泥炭などの特殊地盤では、圧密にかかる時間を正確に
予測することが難しい




実験技術・手法の開発・発展
土の剛性の測定:微小ひずみから大ひずみまで
 前述の通り、土の剛性は有効応力に依存します。よって、剛性変化を一般的に調 べるには、三軸試験機など、拘束圧を負荷できる装置を用いる必要があります。ここまでの研究から、多くの自然堆積土の微小ひずみ挙動は、軸対称異方弾性理 論を用いて記述できることがわかりました。この理論に必要な5つのパラメタを高精度の局所変位計を導入した三軸試験装置により求める手法はKuwano & Jardine (1998)やLings et al. (2000)などによって提案されていましたが、粘土に関してのデータは数が少ない上に、精度に疑問が残るものも少なくありませんでした。そこで、装置や手法の最適 化の他、新たなロジックに基づく弾性パラメタ群の導出などを提案し、その精度を実証しました( (1) )。
 上記の計測方法は非常に優れた精度を有するものですが、計測されるひずみ範囲が非常に限られているという制限があります。そこで、より大きなひずみに対 する補完的な手法として、デジタルカメラによる撮影とその画像解析を通して供試体変形を測定するシステムを構築しました。模型実験などにおいて画像解析を 行う研究は多くありますが、ここでは画像解析により0.001%のオーダーまで変形を分解し、上記の高精度センサーにより測定した微小ひずみ剛性と整合す るほどに精度を高めました。一方、この画像解析により、泥炭の変形のように、ひずみが20%を超える場合まで同一のシステムで変形測定を行うことができま す。
  北大工学部機関紙「えんじにあリング」
 
2012年北大工学部イノベーションフォーラムポスター



局所変位計測・せん断波速度測定併用三軸試験装置による
異方弾性係数の同定


画像解析を用いたエラーフリーCRS圧密試験


上記研究紹介中の参考文献 (必要な方はご連絡下さい)

(1) Nishimura, S. (2014) "Assessment of anisotropic elastic parameters of saturated clay measured in triaxial apparatus: Appraisal of techniques and derivation procedures," Soils and Foundations, to appear in Vol.54, No.3.
(2) Nishimura, S. (2014) "Characterising anisotropic structure of natural clays based on their elastic stiffness and geological backgrounds," in preparation.
(3) 稗田教雄・田中洋行・金子広明 (2013) 泥炭地盤における微小ヒズミのせん断剛性率、地盤工学会北海道支部技術報告集、第53号、pp.109-112.
(4) 山添誠隆・田中洋行・西村 聡・林 宏親 周辺地盤に生じる変形の予測精度向上を目指した泥炭性軟弱地盤に対する構成モデルの提案と実地盤への適用 (投稿中)
(5) 服部 直・田中洋行・金子広明 (2013) 大水深における堆積物の地盤工学的特性、
地盤工学会北海道支部技術報告集、第53号、pp.67-70.
(6) 福富悠太・西村 聡・田中洋行 (2014) 中空試験機による正規圧密自然粘土の非排水強度異方性測定事例 第49回地盤工学研究発表会、北九州(投稿中)
(7) Seng, S. and Tanaka, H. (2011) "Properties of cement-treated soils during the initial curing stages," Soils and Foundations, Vol.51, No.5,
pp.775-784.
(8) Seng, S. and Tanaka, H. (2012) "Properties of vey soft clays: a study of thixotropic hardening and behavior under low consolidation pressure," Soils and Foundations, Vol.52, No.2, pp.335-345.
(9) Tsutsumi, A. and Tanaka, H. (2011) "Compressive behavior during the transition of strain rate changing," Soils and Foundations, Vol.51, No.5, pp.813-822.
(10) 堤彩人・田中洋行・川口貴之 (2010) 粘性土のひずみ速度依存性を評価するための超低速定ひずみ速度圧密試験装置の開発と適用、土木学会論文集C、Vol. 66、No.3、pp.660-670.
(11) Tsutsumi, A. and Tanaka, H. (2012) "Combined effects of strain rate and temperature on consolidation behavior of clayey soils," Soils and Foundations, Vol.52, No.2, pp.207-215.
(12) 高篠周平・四戸彩香・西村 聡 (2013) 軽量混合固化処理土・管中混合固化処理土の低拘束圧下での圧縮性評価 第48回地盤工学研究発表会、富山、pp.723-724.
(13) 杉山洋平・西村 聡 (2014) 高有機質固化処理土の剛性とその非線形性および応力依存性 第54回地盤工学会北海道支部技術報告会、札幌、pp.19-26.
(14) 西村 聡・杉山洋平 (2014) 真のセメンテーションを有する土の剛性モデルと一軸圧縮強度によるパラメタ簡易推定 
第49回地盤工学研究発表会、北九州(投稿中)
(15)
Kitazume, M. and Nishimura, S. (2012) “An application of wet grab sampling to quality assurance of wet type cement stabilized soil,” Proceedings of 4th International Conference on Grouting and Deep Mixing, New Orleans.
(16) 阿部昂祐・西村 聡 (2014) セメント固化処理粘性土の強度に対する養生中有効応力の影響 第49回地盤工学研究発表会、北九州(投稿中)
(17) 筒井康平・田中洋行・山添誠隆 (2014) 三軸試験機を用いた透水性の異方性 第54回地盤工学会北海道支部技術報告会、札幌、pp.41-44.










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