半導体量子構造における電子物性・光物性の理論的・数値的研究

特に

スピン・エレクトロニクス
励起子分子荷電励起子などの励起子複合体の物性
タイプII超格子における「励起子高分子(励起子ストリング)」の可能性
量子モンテカルロ法
の半導体量子構造への適用 など。




簡単な用語解説


半導体量子構造、半導体ナノ構造
 半導体結晶成長技術やLSIの製造に用いられる微細加工技術を駆使して作製される、数100Å以下のスケールの微細な構造。超格子量子井戸量子細線量子ドットなど様々な構造がある。
 電子やその抜穴である正孔をこのようなナノスケールの構造に閉じこめることが出来る。このときの電子や正孔は閉じこめられていない場合と異なる性質を示す場合がある。半導体ナノ構造を研究する目的は、
空間的な運動を制限された電子や正孔の新たな性質を探索・解明することにより、人間の知的好奇心を満たすとともに、文化の発展に寄与すること。
その成果を応用して、人類の幸福の追求、文明の発達に寄与すること。
であろうか。


超格子
 異なる種類の厚さ数100Å以下の半導体を交互に積み重ねた構造。電子や正孔はどちらかの半導体の層に閉じこめられることになるが、それらが同じ層に閉じこめられるものをタイプI、異なる層に閉じこめられるものをタイプIIという。電子や正孔は、層に沿った方向には移動しやすいが、垂直方向には移動しにくくなる。

量子井戸
 厚さ数100Å以下の半導体を、はるかに厚い別の半導体で挟んだ構造。超格子で一方の半導体の厚さを増したものと考えることが出来る。電子や正孔は、層に沿った方向には移動出来るが、垂直方向には移動出来ない。このような系はしばしば準2次元系と呼ばれる。

量子細線
 太さ数100Å以下の半導体の細線を、別の半導体で覆った構造。電子や正孔は細線に沿った1次元方向にしか動けない。

量子ドット
 数100Å以下の大きさの半導体微粒子を、別の半導体で覆った構造。電子や正孔の運動は微粒子内に制限される。

励起子分子
 二つの励起子、すなわち2つの電子と2つの正孔が結合して出来る、水素分子に類似した複合粒子。

励起子高分子(ストリング)
 励起子が直線上に多数結合して、ひも(ストリング)状になったもの。我々の研究により、タイプII超格子中に存在し得ることが理論的に予想されている。

荷電励起子
 励起子に電子または正孔が結合した3体の複合粒子。

励起子
 半導体を光で励起した(半導体に光を当てた)時に出来ることがある、電子と正孔が結合した複合粒子。水素原子に類似している。

量子モンテカルロ法
 量子力学の問題を、計算機にサイコロを振らせて、確率を応用して解く方法。

スピン・エレクトロニクス
 物質中の電子が持つスピンを利用して新しい半導体デバイスを作ろうとする試みが、スピン・エレクトロニクス、略して「スピントロニクス」です。
 原子中の電子のエネルギーは、スピン軌道相互作用によって、スピンが上向きの場合と下向きの場合でわずかに異なっていますが、これが固体でも顔を出す場合があります。その条件は、構造に空間的な反転対称性がないことです。結晶構造自体に反転対称性がない場合もありますが、半導体では、人工的に反転対称性のない構造を作ったり、外部から電場を印加することにより、反転対称性を制御することも可能で、これをデバイスに応用しようという研究が、現在精力的に行なわれています。
 我々の研究室では、これに関連した物理現象を、理論的に研究しています。


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研究内容