ミニセミナー 
「地中熱を利用した路面融雪システムのシミュレーションと設計について」

平成17年3月3日 北海道大学大学院工学研究科B31室

1.路面融雪システムの放熱特性とエネルギー消費量の推定

月館講師(北海道立北方建築総合研究所)

民生用ロードヒーティングの省エネルギー化に必要な諸要素を反映させた数値シミュレーション手法について、実務的なアイディアを交えた講義が行われた。まず、融雪時の負荷計算において、降雪量を「ひと雪」の概念で整理する方法が紹介され、実測との比較から得られた放熱効率の算定式が示された。次に、計算時間の短縮に留意した融雪シミュレーション手法について説明があり、舗装の熱伝導率、断熱材の有無、予熱運転、制御方法に関する検討結果が紹介された。結果として、ロードヒーティングの省エネルギー化には、放熱効率の大きな舗装とすること、予熱を必要としない適切な設備容量とすること、低温で運転するため自然エネルギーや排熱の活用を図ること、の必要性が示された。

2.地中熱融雪システムの最適設計

藤井委員(九州大学)

地中熱利用融雪システムにおける最適設計手法に関し、実測結果を反映させてモデリングされた数値シミュレーションの開発について講義が行われた。秋田市を例にとると、融雪時の表面放熱量として、120 W/m2が必要であるとの推定結果が紹介された。最適設計のためには、この表面放熱量を満たすような舗装体を構成することと、各循環ポンプにおける総消費電力が最小となることが必要であり、この場合には循環流量が10 L/min、放熱管間隔が0.15~0.2 mの条件が適していることが示された。続いて、地中熱交換器内の温度挙動シミュレーション手法として円筒型熱源関数の適用が紹介され、休止坑井を使用したフィールド実験との比較により、短い計算時間で高い再現性が得られることが示された。

 

 

3.地下熱利用型路面融雪の数値解析と実証実験

濱田委員(北海道大学)

 北海道における地下熱利用型路面融雪システムに焦点をおき、低い送水温度でも安定した運転を行うため、数値シミュレーションを用いた適切な路盤構造の評価手法について講義が行われた。路盤熱伝導率2.8 W/m/K、パイプ埋設深さ60 mm、パイプ埋設ピッチ150 mm、熱流束分布20%以内を満たす路盤について解析した結果、送水温度6.4oCでも雪処理速度2 cm/hが得られ、このとき、札幌における全降雪の85%が処理可能であることが示された。一方、フィールド実験により、ヒートポンプを用いない融雪システムの北海道での実用化可能性について述べられ、また、新たに画像解析を取り入れた運転制御手法についても紹介された。

 

4.GroudClub(仮称)を応用した路面融雪システム設計ツールの開発と札幌、東北でのGSHP融雪設計例

野川講師(北海道大学)

 地中部の高速計算モジュールと実システムに対応した路盤融雪計算モジュールを統合した、地中熱利用路盤融雪システムに関する数値シミュレーションツールの概要とその使用方法について講義が行われた。各地における効果予測を行った結果、特に東北地方において高い地中熱利用の可能性が示された。また、地中熱交換器を密集して埋設する場合には、蓄熱効果は高くなるものの、管同士の相互干渉の影響により夏季にリチャージを行う効果は小さくなる例が紹介された。

 

総合討議

大岡委員より、現在各研究機関により個々に行われているシミュレーションについて、一度ベンチマークテストの場を設けてはどうか、との提案がなされた。これは、それぞれのモデルの特徴とその適用範囲を充分によく知ることを目的としており、競争のためではないことが付された。最後に落藤顧問より、この研究会がより内容を充実させ、着々と発展していくことを期待しており、各社のさらなるご協力をお願いしたい、との挨拶があった。