凍結融解作用を受ける斜面の崩壊予知・災害危険度評価システムの確立


◆研究開始時点での背景について

北海道には火山性の砕屑岩や破砕性火山灰地盤が広く分布しているが、このような火山性生成物の地盤や岩盤においては、凍結融解作用などに起因する構成地盤材料の力学的経年劣化が被害を拡大させる場合がある。
また、台風や集中豪雨の被害が比較的少なかった北海道でも、近年の地球温暖化現象に起因すると考えられる異常気象によって、これまで災害要注意箇所として監視されてこなかった緩斜面でも斜面崩壊等の地盤災害が頻繁に発生している。
特に、近年の平均気温の上昇に伴う融雪期の急激な地下水位の上昇は、斜面崩壊を急増させている一因であると考えられている。
しかしながら、北海道のように積雪寒冷気候による凍結融解履歴や地震による振動履歴を受けるような厳しい自然環境下では、多数の影響因子が複雑に絡み合うため、災害の原因を特定することは極めて難しく、凍結融解、降雨や地震などの履歴がどのような形で斜面崩壊に影響を及ぼしているかを詳細に調べた総合的な研究は極めて立遅れている。


◆研究の目的について

本研究は、積雪寒冷地における破砕性粒状層を含む帯水斜面の表層崩壊を誘発する因子の力学的相互作用を解明し、北方圏特有の自然現象に起因する地盤災害の精確な予知・予測法の確立とその適切な防災対策法の構築に資するため、凍結融解履歴あるいは融雪や降雨等の乾湿履歴に伴う構成地盤材料の力学特性の変化に着目して、破砕性帯水斜面の安定解析手法を確立する。
加えて、自然・地盤条件、地盤工学的な知見、過去の災害事例といった異なる情報を統合した地盤情報データベースを作製し、蓄積された情報から合理的な防災計画や維持管理体制の構築に不可欠な様々な情報を目的に応じて創出可能な斜面崩壊予知・災害危険度評価システムを構築するものである。


◆研究の方法について

本研究では、要素試験・模型試験・数値解析・斜面災害データ収集・現地計測を実施し、図1に示す検討フローに沿って以下の研究項目について検討した。

 (1)凍結融解履歴載荷型不飽和三軸試験及び不飽和透水試験による凍結融解・含水状態が異なる地盤材料の力学特性に及ぼす影響の検討

 (2)縮小模型斜面の凍結融解・降雨による斜面崩壊実験による土質が凍結融解・降雨複合型斜面崩壊機構に及ぼす影響の検討

 (3)凍結融解・降雨複合型斜面崩壊モデル(応力変形・熱伝導・浸透連成解析)の開発と数値シミュレーションによる凍結融解・降雨複合型斜面崩壊要因の検討

 (4)実斜面における長期現地調査・現地計測によるフィールド情報の収集と斜面崩壊要因の分析および合理的な斜面状態モニタリング管理方法の提案

 (5)寒冷地地盤情報データベースの汎用化と収録情報の整理・体系化方法など情報活用方法の検討

 (6)積雪寒冷地用斜面崩壊予知・災害危険度評価システムの開発と当該システムを利用した斜面管理方法の提案





図1:研究の検討フロー