北海道大学大学院工学研究院環境システム工学研究室 -環境設備工学における新しい価値の創造-

長野研究室の研究・教育分野
 環境システム工学研究室(通称 長野研究室)は北海道大学大学院工学研究院において「健康で持続可能な生活環境の創造」を目的として、伝統的には環境設備工学、すなわち熱供給、冷暖房、空気調整工学、室内環境などを対象にしていますが、最近では自ら開発した革新的な省エネルギー技術や再生可能エネルギー利用技術を活用した施設・建築物・住宅の計画、設計、インパクト評価など研究・教育フィールドを広げています。当研究室は兄弟研究室と呼べる環境人間工学研究室と共に教員組織、大学院教育においては建築系と環境工学系の研究室からなる空間性能システム部門に属していますが、学部教育においてはいわゆる建築系・土木系・環境系・資源系の4コースからなる社会環境工学科・衛生環境工学コース(旧環境工学科、元は衛生工学科)を担当しています。ここで北海道大学の衛生工学科は1957年に日本で最初に環境工学系の学科として設立され、水環境、大気環境、廃棄物に加え、京都大学の衛生工学科や東京大学の都市工学科にない環境設備系の2研究室を有することが特徴であります。我々の環境設備系2研究室は既に500名程度の卒業生を社会に輩出していますが、その多くが設計事務所、建築会社、設備専門会社、エネルギー関連会社、エンジニアリング会社、メーカー、公務員、大学や公的研究機関などにおいて活躍しています。卒業生の中には高砂熱学工業(株)、(株)タクマ、新菱冷熱工業(株)、そしてスズキ(株)の社長を務められた方もおり、我々の誇りであります。

長野研究室研究スタイル・ポリシー
 大学という教育・研究機関に所属して環境設備工学に関する研究開発を行うにあたり、以下に示す3つの研究スタイルやポリシーをできるだけ貫きたいという意志の下で活動を行っています。
(1) 自ら材料やデバイスの研究開発を主張する(Hop)
(2) 開発した材料やデバイスを応用した機器やユニットの開発と制御も含めたシステムの研究開発を主張する(Step)
(3) 実用化を視野に入れて実規模スケールの研究開発に発展させ、自らが実物件の環境設備の計画・設計に関与し、コミッショニング行っていくことに拘る(Jump)
いずれもオリジナリティーを大切にするということであります。

(1)はアプリケーションを目的とした材料開発を主導的に進めることにより、常に絶対的なオリジナリティーを確保できます。材料の開発をするためには化学や材料の知識が必要となりますが、当研究室の場合には能力をお互いに補完し合える研究員をグループに迎えいれることにより研究開発能力を強化しています。
(2)は自ら機器開発やシステム開発を行い評価することが重要であり、大学が単にメーカーが開発した製品や商品の性能試験をするような、いわば"消費者センター"的役割を担ってはならないと自戒しています。業界団体やメーカーが大学を機器の性能評価の権威付けに利用したいという意向を度々目にしますが、このような仕事は公的な試験機関に委託して行うべきであると考えています。
(3)も(2)と同様であります。自ら計画・設計に関与した物件こそ性能評価を行う意味があります。確かに「測定無くして省エネ無し」でありますが、大学の研究としては自身が全く計画・設計に関与していない施設の省エネ性能の評価を行っても何のためになるのであろうかと疑問に感じています。
 大学における環境設備工学の教育・研究の目指すべき方向性は、最終的にどれだけ高品質な室内環境と省エネルギー性・環境性をクライアントや地域社会に提供できるのかにあると考えます。そのために独創的で高度な研究を創造していかなければなりませんが、それを常に長年にわたり継続していくことはなかなか難しいことを実感しています。最先端技術から離れている分野と思われがちですが、薄型テレビやLED照明の例を出すまでもなく一旦イノベーティブな技術が受け入れられれば一気に社会に浸透し変革が起こることが分かっています。当研究室は民生用熱エネルギーの分野で新たな材料や機器の研究開発を主導してOnly-Oneを産みだし、それを元にHop-Step-Jumpと羽ばたき、研究成果を実社会に浸透させることに拘って研究を進めることをポリシーとしています。
このページのトップへ