走行車両-橋梁連成系に関わる動的諸問題の解析的研究


橋梁交通振動および周辺地盤振動解析

研究背景と目的
  高度経済成長期以来,道路ネットワークの確保の観点から建設された数多くの橋梁が都市生活の利便性に大きな役割果たしており,国民生活に不可欠な施設となっている。その一方,近年大型化・高速化しつつある車両によって橋梁構造物は常に過酷な振動状況に晒されており,振動による部材の劣化や疲労損傷等が懸念される。近い将来に数多くの橋梁構造物が設計寿命を迎え老朽化が進む中,今後も適正な健全度を維持しながら継続的に供用されるために,走行荷重下の橋梁振動状況を明らかにする必要がある。
  また,他の環境問題と同様に,これまでの橋梁は機能性,経済性および安全性が優先され,周辺環境への影響に対しては必ずしも十分な配慮がざれてこなかったのが現状である。周辺環境への影響として近年関心が高まっている項目として騒音や地盤振動と言った環境振動が取り上げられる。環境振動とは「橋梁等の構造物が発生源と考えられる揺れや音で,利用者,周辺住民および生態系等に対して,物理的,心理的,生理的な影響を与える振動および騒音のこと」である。これらの橋梁周辺環境振動に関して先進諸国では厳しい規制の対象になっている。都市の高い高架橋構成比率または高架橋に隣接し建設された民家等は近代日本都市の代表的姿であり,これらの高架橋周辺環境振動の予測,評価および対策の検討は欠かせない研究テーマである。さらに最近では,これまでの機能優先の量的整備から,豊かさやゆとりが実感できるような環境との調和を考慮した質的整備が求められている社会状況に移り変わりつつある。
  本研究では,まず走行車両-橋梁連成振動解析手法を構築し,橋梁の交通振動特性を明らかにする上で,車両-橋梁-地盤の動的相互作用を考慮できる橋梁周辺地盤振動の評価および軽減対策の考案さらにその低減効果の検討を行える解析ツールの構築・提示を目的とする。


研究内容
1 橋梁-列車連成振動解析 <関連論文: Paper
  鉄道高架橋部分を三次元有限要素でモデル化し,モード法により定式化を行い,質点-バネ振動系にモデル化した車両との連成振動微分方程式を,Newmark's β 法を用いて逐次積分をして動的応答解析を行う。このとき,β=1/4とし,各時間間隔における収束判定は1/1000とする。
2 地盤振動解析
 <関連論文: Paper-1 Paper-2
  列車走行による高架橋振動が引き起こす周辺地盤振動について,列車-橋梁連成振動解析において求めた橋脚下端部地盤反力を加振力としてフーチングと杭で構成される基礎構造物に入力し,薄層要素法に基づく地盤-構造物動的相互作用解析プログラムSASSI2000を用いて地盤振動解析を行う。

研究内容の詳細について,関連論文を参照して下さい。




走行荷重下の高架橋耐震応答解析および車両走行安全性

研究背景と目的
  兵庫県南部地震において,都市高架橋が深刻な被害を被ったが,幸いに早朝で通行車両が極めて少ない状況であったが,頻繁に車両が通行する状況,あるいは交通渋滞下で地震を受けると,高架橋および走行車両はどのような事態になるのか明らかにする必要がある。そして平成16年10月23日,新潟県中越地震が発生し,初めて高架橋を走行中の新幹線車両が脱線する事態になった。列車が旧型で車体が重いことや,速度が200km/hで比較的に低いことなど,各種要因が重なって車両転覆に至らなかったことは,不幸中の幸いであった。しかし,地震時の列車走行安全性検討および有効な対策の策定が非常に重要かつ緊急な課題であることが明らかとなった。一方,現行の道路橋示方書では,耐震設計において活荷重と地震荷重の組み合わせを考慮していないが,都市域の大型かつ重量化しつつある車両の通行する高架橋では,頻繁に起る交通渋滞の間に地震の発生する可能性を考慮すべきである。
  本研究では,交通荷重の高架橋走行中における大規模地震発生の事態を想定し,立体三次元橋梁および車両モデルを構築し,橋梁‐走行車両‐地震連成系をシミュレーションする動的解析手法を確立する。そして,確立した手法を駆使し,地震時高架橋の耐震性能および車両走行安全性の評価を行うことを目的としている。

研究内容  <関連論文: Paper-1 Paper-2
  高架橋構造を三次元はり要素で,車両を質点-ばね-ダンパ振動系でモデル化する。そして,車輪とレールとの変位適合条件により,車両と橋梁との連成振動を定式化する。第一段階として構造物の挙動を線形範囲内とし,橋梁の定式化においてモード法を適用する。地震荷重について,橋脚基部における地震加速度による慣性力を橋梁の全節点および車両の全質点に同時に作用するものとする。本研究において最終的には,大規模地震時における橋梁および車両の非線形性を考慮した地震応答解析手法構築を目指す。
  解析手法の妥当性検討について,現段階で車両走行時の新幹線高架橋地震応答の実測値がないため,本研究では以下のように間接的な手順で確認する。まず,車両と橋梁との連成振動解析手法の妥当性確認について,実際に車両走行時に計測された新幹線高架橋の振動応答と解析値と比較して行う。そして,地震応答解析部分の妥当性については,橋梁のみの場合の地震応答解析値を,地震解析汎用ソフトで得られた値と比較して確認する。

研究内容の詳細について,関連論文を参照して下さい。

  
本研究の全体的なイメージを新幹線システムを例に下図に示す